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可変タービンシステム(VTI)レトロフィット工事を実施し、A.P.Moller社の大型原油タンカーの減速運航時の燃費及びCO2排出量を低減

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三菱重工舶用機械エンジンは、A.P.Moller社の保有するVLCC超大型原油タンカー"Maersk Ingrid"が就航後3年目のドックに入るのを機に、主機関の過給機に可変タービンシステム(VTI)のレトロフィットを実施した。

VTIは、三菱重工舶用機械エンジンが同社の過給機METシリーズ向けに開発した可変タービンシステムで、タービン容量を2段階に変化させる開閉弁をガス入口通路に装備している。船舶が減速して運航する場合、開閉弁を閉じることで主機関に送る掃気の圧力を高め、燃料消費率が低減し、CO2排出量を低減する。三菱重工舶用機械エンジンはこれまで、新造船向けに10台以上のVTIシステムを製作しているが、就航船の過給機にVTIシステムのレトロフィットを実施したのは今回が初めて。

主機関は、バルチラ7RTA82Tで、三菱MET71MA型過給機が2台搭載されている。いずれも韓国現代重工業がライセンス生産したもの。今回、三菱重工舶用機械エンジンはVTIシステム付きガス入口内側ケーシングを本船に供給した。レトロフィット工事は4日で完了し、その後の試運転でNOxの計測を実施し、2次規制値を満足することが確認された。また、高負荷域の性能を犠牲にすることなく、低負荷運転時において期待通りの燃費低減効果が得られた。この最初のレトロフィットプロジェクトを取りまとめた、A.P.Moller - Maersk のVaibhav Chavate氏は、燃費低減効果はMCR10~50%負荷で1.6~3.2%と大きく、費用回収期間は十分短い、とコメントしている。A.P.Moller社では引き続き、別の船への適用も検討している。

三菱重工舶用機械エンジンのVTI過給機は船舶の減速運航時に最適なシステムであるだけでなく、構造がシンプルな為、高い信頼性を維持し、低コスト、容易なメンテナンスを実現している。また、VTIシステムは排ガス入口部にノズルと開閉バルブを追加することで容易にレトロフィットすることが可能。さらに、船舶が減速運航から航行速度を上げた場合でも、開閉バルブの操作で従来の高い燃費効率を発揮することが出来る。

三菱重工舶用機械エンジンは1950年代に水冷式過給機を完成して市場に参入、1965年には、「MET」シリーズの先駆けとなる世界初の無冷却過給機を開発し、以降、数多くの高効率・高出力機種を市場投入してラインナップに加えてきた。MET過給機はシンプルでメンテナンスしやすい構造で、製品の信頼性が高く、お客様から高い評価を得て、豊富な実績を誇っている。

開閉弁を装着したVTI過給機
開閉弁を装着したVTI過給機
VTI過給機断面図
VTI過給機断面図
MET-VTI 過給機ノズル
MET-VTI 過給機ノズル
MET-VTI 断面図
MET-VTI 断面図