Mitsubishi
Heavy
Industries
PROJECT STORY
国家安全保障への貢献
Heavy
Industries
国際共同開発の推進から
開発・生産能力の強化まで、
日本を守る
三菱重工グループの技術とは。
INTRODUCTION
現在、我が国も含めた世界の安全保障環境は厳しさを増すと共に複雑化している。パワーバランスの急激な変化や、力による一方的な現状変更やその試み、テロやサイバーなど新たな脅威の出現に加え、無人・AIアセットの開発・導入なども進められている。こうした状況の中、日本の安全と繁栄を維持し、国民の生命と財産を守ることは、政府(国)の最も重要な責務と言える。三菱重工グループは、国の政策に応えていく形で、従来から一貫して防衛領域に取組み、日本の防衛産業におけるリーディングカンパニーとして、数多くの防衛装備品(※)の開発・生産・運用支援に携わってきた。それらの卓越した技術力で生み出した各種防衛装備品が、日本の平和と安全・安心な社会を支え続けている。ここでは、防衛事業を担う、航空機・飛昇体事業部の営業担当者と技術者の活躍を紹介する。
※防衛装備品……自衛隊が任務遂行のため使う航空機、艦艇、車両、ミサイル、情報・通信システムなど。
三菱重工だから可能となる
国家安全保障への貢献
地政学リスク(※)の高まりにより防衛力強化が急務である状況を受け、能力の高い防衛装備品の導入が進められる中、三菱重工の取り組みも加速している。その一つが防衛白書でもうたわれている「スタンド・オフ防衛能力」の抜本的強化だ。各国のレーダーや各種ミサイルの性能が著しく向上していく中、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国への攻撃を効果的に阻止する必要がある。このため、侵攻する相手方の艦艇などに対して、脅威圏外の離れた位置から対処を行えるようにするのが「スタンド・オフ防衛能力」である。具体的には、車両や艦艇、戦闘機から発射可能な「12式地対艦誘導弾能力向上型」などの導入が検討されている。これによって相手方の対応をより困難にでき、わが国への攻撃に対する抑止力を高めることが可能となる。他にも「統合防空ミサイル防衛」、宇宙アセットを活用した「防衛宇宙」等々、三菱重工は蓄積された技術力を発揮し、高いレベルの防衛能力の実現に向けた取り組みを推進。これらは三菱重工だから可能となる、国家安全保障への貢献にほかならない。
※地政学リスク……特定の地域における紛争やテロなどによる政治的、軍事的緊張が、関係国や世界の経済に及ぼすリスクのこと。
国際共同開発や次世代要素技術開発に
着手し、技術で日本を守る。
三菱重工は、これまで先進技術実証機をはじめとする各種研究を通じて、戦闘機に用いる最先端技術の確立に取り組み、防衛省と開発作業を進めてきた。この取り組みは現在、日英伊3ヵ国による次期戦闘機開発という形に結実している。次期戦闘機における国際協力に国内関連企業が幅広く参画することで、科学技術分野での人材の育成や、DXの推進等、産業界の革新を促すことが期待されている。さらに次世代要素技術開発の一つとして、防衛装備の無人化がある。すでに一部導入されている、無人航空機、無人水上艇、無人潜水艇、無人地上車両などの無人アセット(装備品)を用いた防衛能力の開発・整備である。これらは人的消耗を抑えることができるなどの利点に加え、AIなどと組み合わせることで、部隊の構造や戦い方を根本的に一変させるゲームチェンジャーとなり得るとも言われている。三菱重工は、これら先進の技術で日本を守ることを使命と自覚し、より高い次元で、日本の防衛力強化に注力していく考えだ。
さまざまな技術やアプローチを
用いて日本を守る
ミサイル開発・生産能力を増強し
安全保障へ貢献!
画像は防衛白書(R6年版)を当社加工
日英伊3か国による
次期戦闘機の共同開発
画像は防衛白書(R6年版)を当社加工
航空、海洋、陸上の
無人機技術部門を発足
航空機・飛昇体事業部における
営業と技術者の活躍
日本の防衛に貢献する、
確かなやりがいが前進する力。
営業部 固定翼機グループ
2010年入社
総合政策学部 総合政策学科卒
営業部 空自飛昇体・新領域グループ
2015年入社
理学府 化学専攻修了
営業としての役割を教えてください。
私たち営業担当は、お客様である防衛省と会社の橋渡し役。つまり、お客様の要望や意見を会社に伝える代弁者であり、さらには、会社の考えをお客様に伝える代弁者でもあります。そのプロセスでお客様のニーズを踏まえた事業提案を検討し、それを実施していくことで、受注獲得や受注拡大に繋げていくのがミッションと言えます。
私も基本的な活動は服部さんと同様で、お客様のニーズを引き出すことが一番のポイントと考えています。ご要望の背景をヒアリングしていく中で、本当に求めているものを的確に把握していく。それを提案内容に反映するために社内関係者と調整し、実際の事業へと繋げていくことが営業の役割です。
私が担当しているのは、F-2戦闘機およびF-35戦闘機。これら航空自衛隊にて運用されている戦闘機に対して、アップグレードやメンテナンス事業を提案、契約締結へと展開していきます。メーカーだからこそ製品に対する理解が深く、メーカーだからこそ提案できることがあり、それが各戦闘機の高品質、高機能を実現していると思っています。
私は航空機搭載ミサイルと新領域事業を担当しています。新領域事業とは、従来の枠組みに捉われず、最先端の科学技術を応用した新しい防衛装備品の開発・構築を行う事業のことで、1例として先日「ドローン迎撃用の高出力レーザシステム」を納入しました。他社とのコンペティションを経て受注したものであり、社内研究の蓄積やニーズに応じた製品を作り上げたことを評価いただけたと思っています。
三菱重工に期待されていること、強みを教えてください。
防衛産業トップという実績から、お客様の高い期待感を常に感じています。三菱重工ならば難易度の高い依頼も解決してくれるだろうと。それに応え続けてきたことが、強みとなって現れている。中途半端なことはしないというプライドもある。そしてそれを支えているのが「人」だと思います。熱量が高く想いが強い人が集まっている。それが強さの源泉だと思います。
防衛産業をリードする会社と認識されており、その技術力や品質への高い評価、期待感を感じます。防衛予算が増大している状況下、提案のご要望を受ける機会も増えています。服部さんが指摘された「人」も重要なポイントで、実直かつ真摯な人が多い。それが信頼に繋がり当社の強みになっていると思います。
仕事のやりがい、社会的意義を教えてください。
担当製品を通じて、日本の空を守る一翼を担っているという自負があります。またスクランブル発進などで、担当する製品が活躍しているニュースを見るとやりがいを感じます。戦闘機はパイロットだけでなく、多くの人が関わり、その想いを乗せて飛んでいます。チームで製品をつくっている、その実感もやりがいに繋がっています。
日常生活で担当製品に触れる機会はありませんが、「国防」という日常生活を下支えする重要な事業に携わっており、社会に貢献できていると感じています。私の就職活動の軸であった「誰かの役に立つ、誰かを幸せにできる仕事」を実現できており、また、日常では容易に携われない仕事であるからこその面白さややりがいを感じています。
今後の目標、夢を教えてください。
多岐にわたる製品を提供している三菱重工だからこそ、防衛のみならず他事業とも連携しながら今後の防衛事業を発展させていきたいと思っています。国防に関して国内にさまざま意見があることは承知しています。しかし日本を守るために防衛産業は絶対必要であり、「日本のために」という高い志を抱きつつ、前に進んでいきたいと考えています。
「新領域」は防衛の新たなトレンドであると思います。新しい領域だからこそ、現状の枠に捉われずクロスドメインも視野に取り組みを進めていきたいと考えています。防衛には何が必要か、防衛省のニーズを踏まえた上で自分たちに何ができるか模索しながら、官民一体となって取り組んでいきたいと考えています。
新たな脅威から日本を守る
ミサイル防衛システムの確立に挑む。
航空機搭載・防空システム設計課 陸上防空システムチーム
2023年入社
工学研究科 航空宇宙工学専攻修了
現在の仕事内容を教えてください。
地対空のミサイル防衛システムの開発を担当しており,日本全土を守るための防空構想や迎撃方法を具体化し、迎撃用のミサイルの設計に落とし込んでいます。周辺国ではミサイル開発が進められ,脅威が多様化・複雑化しています。中でも、弾道弾迎撃ミサイルに対抗する兵器として近年登場したHGV(Hypersonic Glide Vehicles=極超音速滑空体)への対処は喫緊の課題です。HGVは、弾道ミサイルで打ち上げ、宇宙空間で分離し、大気圏突入後は音速を超えるマッハ5以上の極超音速で滑空飛しょうし、目標を攻撃する兵器です。その極超音速性に加え、飛しょう経路や着弾点の予測を困難にする縦及び横方向の機動性(跳躍、降下、進路変更など)、また低い高度を飛しょうするためレーダーで探知困難とされるなど、迎撃が極めて難しいとされています。
HGVの飛しょう経路を予測するために
どのような技術が必要になるのでしょうか?
HGV対処のためのミサイル防衛システムの開発が私のミッションです。現在の弾道ミサイル防衛では、弾道ミサイルの弾頭が予測可能な軌道に乗ることを前提にしています。しかし、HGVはその高機動性から予測が困難。その飛しょう経路をいかに予測し迎撃するかが、テーマの一つになっています。現在取り組んでいるのが、大量のデータを活用しAI等を駆使して迎撃の戦略を立てるというもの。予測のみならず、誘導弾そのものの材料や構造、飛しょう方法、HGVとの「会合点」に向かって飛しょうして行くまでの速度・エネルギーの維持等々、課題は山積しています。一つひとつ課題をクリアしてきたいと考えています。
仕事のやりがい、三菱重工の強みを教えてください。
HGVは、日本周辺の国で近年開発が進められており、日本にとって大きな脅威となっています。そのためHGV対処のためのミサイル防衛システムの開発は急務となっています。HGVに対する防衛手段を確立し「国防」に寄与できることに、社会的意義、そしてやりがいを感じています。また、開発プロジェクトを取りまとめる課に所属するため、各分野の専門家と交流して幅広く俯瞰しつつ、開発を主導できる点にもやりがいを感じています。当社の強みは、幅広い製品と技術を有している点。総合研究所の専門家と一緒に仕事をすることが多く、最新の技術と蓄積された製品技術を融合し、困難な技術課題に取り組んでいます。また先日、魚雷を開発する部署と交流しました。魚雷と誘導弾とで共有できる課題が多く、新しい考えを取り込むことができました。
今後の夢、目標を教えてください。
先日、ポーランドで開催されたミサイル防衛に関する国際会議に参加しました。私もHGV対処の誘導弾システムに関するプレゼンを行い、各国の技術者とも交流しました。HGVの脅威、そして迎撃の困難さは各国とも共有しており、改めて自身のミッションの重要性を再認識しました。また、長年防衛製品の開発に携わり、国産での開発も可能にしてきた三菱重工の技術力があってこそ、世界の先端を行く技術者と肩を並べることができていると感じました。HGV対処のためのミサイル防衛システムの開発は、およそ10年を費やすプロジェクト。今後も様々な技術者から刺激を受けながら、世界でまだ誰も確立できていない技術を切り拓いていきたいと考えています。そして、開発した誘導弾が配備され国防に寄与するまで関わっていきたいと思っています。
「衛星コンステレーション」構想。
衛星に搭載する、AIで画像処理する
「ミッション機器」の開発に取り組む。
システム・制御機器設計課 防衛宇宙システムチーム
2017入社
新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻修了
現在の仕事内容を教えてください。
防衛宇宙システムチームの役割は、安全保障領域で検討されている衛星システムの構想を具体化することです。中でも注目されているのが、「衛星コンステレーション」。これは、多数の人工衛星をある軌道に打ち上げ、一体的に機能させる技術構想を指します。衛星コンステレーションはさまざまな分野での活用が可能ですが、安全保障領域では、通信や情報収集等に活用することが、防衛力強化に不可欠とされています。たとえば、複数の衛星から、遠方の目標の識別や位置情報の取得等を行うことで、脅威となる対象を迅速かつ的確に捕捉することが可能となります。現在は、衛星の運用構想の検討に加え、実証衛星に搭載する「ミッション機器」の開発・設計業務に従事しています。
「衛星コンステレーション」の実現において
どのような技術がカギとなるのでしょうか。
世界中のあらゆる場所を観測することが可能となる「衛星コンステレーション」ですが、私が現在、開発に取り組んでいる「ミッション機器」は、衛星が取得した画像の画像処理に関するものです。対象物の脅威度分析も含めて、AIで効率的かつスピーディに画像処理し地上に送信するなど、その衛星がミッションを遂行するにあたって必要な機能を果たすための機器開発を進めています。衛星に搭載するミッション機器の機能・性能によって、コンステレーションシステム全体の機能や性能も決まるため、優れたミッション機器を開発することは、コンステレーション構想実現のカギとなります。
仕事の社会的意義、三菱重工の強みを教えてください。
衛星のミッション機器を新規で開発する仕事一つとっても、単に作って打ち上げて終わりではありません。それを使ってどのように機能させるか、社会に役立てていくか、開発の先にどんな事業を展開していくか等々、それを常に考え続けることに、社会的意義を感じています。当社は、製品の種類やプロジェクトも多彩で数も多いため、個人の裁量が大きい特徴があります。それら個人個人が主体的に活躍でき、また各分野の専門家の意見を聞き、指導を受けながら仕事を進めていける環境があります。それ自体が技術者の成長を促していると感じています。技術者の成長が当社の高い技術力の根源にある。したがって、技術者が育つ文化・風土が根を下ろしていることが、当社の強みの一つと思っています。
仕事のやりがい、今後の目標、夢を教えてください。
「衛星コンステレーション」は、防衛の世界のみならず、その多彩な活用によって世の中の新しいあり方を示すゲームチェンジャーになる可能性があると思っています。そのような時代に、最前線の現場で、将来の全体システム、世の中にまだないシステムを考え、生み出していくことにやりがいを感じています。ミッション機器開発においては、テーマの一つである画像処理時間の短縮化に取り組み、実証のための衛星搭載を実現するのが当面の目標。その後も、「衛星コンステレーション」のシステム全体の運用に関わり、宇宙利用の新しいカタチを模索していきたいと考えています。また、多くの人と関わり仕事を進めていますが、技術的にも精神的にも、周囲の多くの人から頼られる人材に成長したいと考えています。
機体システムの機能試験を担う。
問題の原因を究明して解決に導き、
機体を部隊に送り出す。
ヘリコプタ課 飛行整備係
2021年入社
工学研究科 航空宇宙工学専攻修了
現在の仕事内容を教えてください。
防衛航空機の一つであるヘリコプタの製造に携わっています。製造といっても、実際にものづくりに関わるのではなく、新規製造や修理の最終ゲートとして、メカ及び電子機器を含む機体システムの機能試験を実施し、お客様への機体搬出までを担当しています。試験実施のみならず、ものづくりの現場がスムーズに動くための、メンバーのマネジメントも重要な役割。自衛隊が現在運用しているヘリコプタの内、当社で取り扱っている機種は、哨戒機の「SH-60K」、多用途の「UH-60JA」、救難用の「UH-60J」。これらヘリコプタを対象に、日常的に発生するのが定期的な修理・メンテナンスになります。ヘリコプタは、全国の各部隊から直接工場に飛来。ユーザーと直に接するため、緊張感と同時に確かな手応えを実感します。
ヘリコプタ製造において最も難しい点はなんですか。
機体システムの機能試験は、製造の最終フェーズですから大きな責任が伴い、ミスは許されません。私たちが最も留意するのは、試験時のトラブル対応です。搭載されている多数の電子機器類は、些細な外的影響で作動しなくなることもあり、何かしらの不具合が発生することは少なくありません。トラブル発生時は、社内関連部門との調整やこれら機体構成部品をはじめとした多岐にわたる関連要素を整理して、様々な視点から原因を究明していきます。また、トラブルを解決するだけでなく、スケジュールやコストへの影響も検討し、全体を俯瞰して判断することも大切です。その過程で、航空機、ひいてはものづくりの視点での新たな気づきを数多く得ることができます。こうしたトラブル対応時の学びの機会が、自身の成長に繋がっていると感じています。
仕事のやりがい、三菱重工の強みを教えてください。
自然災害も少なくない日本では、「救難」という観点でも、高度な機能を有している自衛隊ヘリコプタは大きな役割を果たしていると思います。三菱重工としてその使命の一端を担えていることに、社会貢献できている実感があり、日々の業務に対する原動力の一つとなっています。また当社は、大きな組織であるため、トップダウンの傾向が強いのではないかと思っていましたが、実際には論理重視で上司とも対等に話せる風土があり、伸び伸びと仕事に取り組める環境と感じています。さまざまなバックグラウンドを持つ技術者が集まっている会社であるため、課題に直面した際にも、有識者・専門家が必ずいる点が心強くもあり、会社としての強みだと感じます。
今後の目標・夢を教えてください。
三菱重工の防衛事業は、日本の安全保障や救難において重要な役割を担っています。その役割を果たし、「日本を守る」仕事を続けていきたいと考えています。そのため、ヘリコプタ及び航空機(戦闘機)の領域で多くの知見を吸収することが、今の自身の課題と考えています。また、現在は既存機の量産、修理・メンテナンス業務が中心ですが、ビッグイベントである新しい機種の立ち上げ、あるいは新しい事業の創出等を経験して、「この製品のこの部分を自分が担当した」と言えるようになりたいと思っています。そのためにも最前線で活躍できる技術スキルや社内外とのコミュニケーションスキル、海外とリレーションシップを構築できるスキルなど、多彩なスキルを身につけて、着実に成長していきたいと考えています。