#12
WORK&
PERSON
INTERVIEW

「水化学」からのアプローチで、
原子力プラントの安全と信頼を支える。

廣瀬 春奈
HARUNA HIROSE
設計
#原子力 #プラント
原子力セグメント
プラント設計部 系統設計課 水化学技術チーム
[2022年入社]
工学研究科応用化学専攻修了
※内容は取材当時のものです

大学院では化学を専攻したと聞いています。
三菱重工への入社を決めた理由を教えてください。

大学では化学を専攻。大学院では化学工学を選択し、粘性のある液体を撹拌する装置開発のため、物質の粒子の挙動について研究しました。就活の軸としたのは多くの人に貢献できる仕事であること。その一つとして、興味を持ったのが原子力です。世間で原子力に対する不安が強いことは理解していましたが、そうであるならば、多くの人の理解を得られる高い安全性を確保した原子力プラントを作りたいと思いました。三菱重工へ入社を決めたのは、インターンシップに参加した際、社員の方々のやり取りに触れ、とても風通しが良いことを実感したからです。

担当されている「水化学」について教えてください。
原子力プラントにおいてどのような役割を担っているのでしょうか。

私たちが取り組む軽水炉とは、減速材に軽水(普通の水)を使ったものをいい、この水が冷却材を兼ねている特徴があります。「減速材」とは、核分裂の過程で発生した高速中性子の速度を遅くするためのもの。「冷却材」は、核分裂で発生する熱エネルギーを原子炉の外に取り出す役割をするものです。この水は、構造材料や燃料被覆管など多様な金属材料と接しながら、炉内をさまざまな条件下で循環しています。水化学は、水とこれら金属材料との間で生じる腐食、腐食生成物に起因する被ばくや放射性廃棄物を扱う工学分野です。具体的には、使用する水について、用途、目的にあった水質の確保や腐食抑制等のため、不純物の除去や薬品添加など必要な措置を行っていきます。たとえば、冷却材に含まれる腐食生成物等の不純物は、放射性物質となって系統全体に拡がり、放射線レベルの上昇による従業員の被ばくや放射性廃棄物の増加に繋がりかねません。このように水化学は原子力プラントの安全性・信頼性を支える重要な役割を担っています。

ご自身は、具体的にどのような業務を担当しているのですか。

材料の健全性維持やプラント性能維持、被ばく低減等の水化学関連業務に携わり、基本設計からアフターサービスまで幅広い分野をフォローしています。通常、お客様である電力会社から水質データを提供されることが業務のベースになります。この水質データは水の中に放射性物質がどれくらいの割合で含まれているかが示されているもので、私たちはそのデータを評価。問題のない基準値以下であれば、報告書として提出します。基準値を超える状況はほとんど発生しませんが、基準値内であっても前回より数値が高ければ、そのリスクを分析し報告します。三菱重工が進める加圧水原子炉(PWR)は、原子炉の中でつくった高温高圧の水を蒸気発生器に送り、蒸気の力で発電用のタービンを回して電気をつくります。水化学において重要なことは、蒸気発生器の徹底した腐食抑制です。冷却材に含まれる不純物や放射性物質の除去、冷却材への薬品添加などを行い、水質を規定値内に収まるように管理しています。

印象に残っている取り組み、やりがいを教えてください。

私の仕事は、社内の他部署や研究所と共に業務を進めていきますが、現地の原子力プラントへ出向くこともあります。入社3年目、OJT指導員と2週間現地に出張しました。目的は現地工事を指揮すること。工事内容は蒸気発生器の伝熱管に付着した鉄(錆)を除去するというものでした。錆が付着すると、プラントの効率が低減してしまいます。錆除去は薬品添加によって行われました。現地は2交代制。つまり、指導員が夜勤、私が一人で日勤を務めました。私たち設計担当は、何か不具合や課題があれば判断する立場。初めての経験であり、不安と緊張の日々が続きました。サンプリングにおいて濃度が不安定という状況にも陥りましたが、適切に判断し無事に完遂。自信に繋がりました。この取り組みも含め、自分の仕事がお客様をはじめ、人の役に立っている手応えを得られたとき、やりがいを実感します。

これから実現したいこと、ご自身の夢をお聞かせください。

目標とすること、実現したいことは、入社以来変わりません。それは世の中の多くの人に安心していただく原子力プラントを生み出すことです。そのためには、お客様である電力会社と信頼関係を築き、電力会社、三菱重工、パートナー企業が一丸となって、徹底した安全性・信頼性を追求していく必要があると考えています。安全の確保に妥協はないと思っています。現在、「革新軽水炉 SRZ-1200」と名付けられた、高い安全性を備えた原子力プラントの開発が進行中です。このプロジェクトも含め、新たな技術領域への挑戦を継続し、誰もが理解納得する、より安全性の高い原子力プラント創出の一翼を担っていきたいと考えています。

PERSONAL DATA

プライベートは愛犬と過ごすことが多く、一番の癒やしになっています。愛犬をおなかに乗せて一緒にお昼寝するのが至福の時。また会社の女性社員同士、とても仲が良く、先日はピザパーティを開きました。同期や先輩とユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったのも最近のいい思い出です。
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