#08
WORK&
PERSON
INTERVIEW

自ら手がけたガスタービン翼が、
世界中の発電所で回る。
多くの光を世界中に届けたい。

中島 可能
KANO NAKAJIMA
設計
#発電設備 #ガスタービン
GTCC事業部
ガスタービン技術部 ガスタービン統合開発1グループ
[2022年入社]
理工学研究科物質科学専攻修了
※内容は取材当時のものです

大学院での専攻は化学系と聞いていますが、
現在の仕事であるガスタービンへの関心はあったのですか。

大学院では、高温環境で使われる金属材料の耐酸化性を向上させるための研究に注力しました。化学要素が強い研究で、ミクロ組織に向き合う日々でした。就活で軸としたのは、専攻にとらわれず、「スケールの大きな、ワクワクする仕事をしたい」ということ。それによって、多くの人の役に立ち、人に感動を与えることができればと考えていました。そんな折、三菱重工のインターンシップに参加。そこでガスタービンに出会い、精密かつスケールの大きな製品の面白さに加え、お世話になった社員の方々が仕事に対して熱意と誇りをもって活躍されている姿に感銘を受け、入社を決めました。

そもそもガスタービンとは
どのような製品なのかを教えてください。

ガスタービンとは、燃料となる軽油や灯油、天然ガスなどを燃やすことで動力を得て、回転エネルギーを電力に変換する装置です。ガスタービンでは大量の空気を吸い込み、「圧縮機」で空気を圧縮、続く「燃焼器」で高圧の空気に燃料を噴射し、燃焼させます。そして高温高圧となった気体が「タービン」を回転させ、動力を回転力として取り出します。このように、高温高圧のガスでタービンを回すわけですが、三菱重工が従来から追求してきたのが高効率化。ガスタービンの燃焼温度は非常に高温であり、燃焼温度が高いほどより多くの出力を効率良く発生させることができます。三菱重工のガスタービンは、タービン入口温度1600℃級で世界最大・最高効率を達成するなど、常に世界をリードしています。

ご自身は、ガスタービンの
どのような開発に取り組んでいるのですか。

ガスタービンは、主に圧縮機、燃焼器、タービンの3つの構成要素で成り立っていますが、私は、タービンに関わる開発設計を担当しています。タービンの仕組みは、高温高圧ガスがタービン羽根車に吹き付けられることによって回転します。タービンは空気を整流する「静翼」と高温高圧ガスの流れを受け止めて回転する「動翼」からなります。「静翼」と「動翼」を併せて一つの段とし、段を軸方向に4段重ね、段階的に高温高圧ガスから回転の動力を取り出していきます。私の担当はタービン3段動翼。高効率化の実現のためには、高温高圧の過酷な環境の中でも動翼性能を維持することが求められます。そのため、動翼を冷却する必要があり、その最適な冷却構造を検討し、開発設計することが私の役割です。

印象に残っている取り組み、
仕事のやりがいを教えてください。

三菱重工では、入社1年目に、グループで今後取り組むべき課題に対して論文を書く機会があります。その当時取り組んだのが、現在の仕事にもなっている、高効率なタービン3段動翼の概念設計でした。動翼の冷却は基本的には空気冷却ですが、その仕組みは多彩であり、その効率性もテーマの一つです。入社当時、その概念設計に取り組み、今後量産展開できるよう、現在は基本設計といったフェーズまで進むことができました。基本設計は、翼の形を決め、より最適な冷却構造を備えた動翼そのものを設計していく作業であり、大きな枠組みが固まってきた段階にあります。量産展開はもう少し先になりますが、他部署の人と関わり、巻き込んでここまで進んできた実感があり、その手応えの中にやりがいを感じています。そして、若手にもチャンスを与えてくれる環境であることを実感しています。

ガスタービン発電は、CO2削減などの地球環境問題に対して、
有効な発電方式なのでしょうか?

現在主流となっているのは、GTCCと呼ばれるガスタービン・コンバインドサイクル発電プラントで、これは天然ガスなどの燃料を使用したクリーンかつ高効率な発電設備です。GTCCは、ガスタービンによる発電とガスタービンからの排熱を利用した蒸気タービンからなる複合発電であり、高い発電効率、大幅なCO2排出削減を実現しています。さらに三菱重工はガスタービンの燃料にも注目し、水素への転換を志向。現在、天然ガスとの水素との「混焼」による実証実験も進めています。将来的に、水素を燃料としたGTCCを世界中に届けることで、地球環境問題の解決に貢献できると考えています。

これから実現したいこと、ご自身の夢をお聞かせください。

ガスタービンは、あらゆる工学分野の技術を集めた壮大かつ精密な装置です。私は、元々機械畑の出身ではありませんが、今後より多くの人と関わりながら、より多くの工学知識を習得して信頼される設計者に成長していきたいと考えています。そして、ガスタービンの専門家として新たな機種開発に挑戦したい。たとえば、燃料が水素に置き換わった際、タービンにはどのような影響があり、どのようなタービンが求められるのか。スピード感を持って臨機応変に対応し、新たなガスタービンを生み出したいと考えています。そして、自身の設計したタービン翼が世界中の発電所で回り、少しでも多くの光=電気を世界に届けることが夢です。

PERSONAL DATA

週末はスポーツ観戦(特に海外サッカー)をしながら、ビールを飲むのが楽しみの一つ。学生時代は、アルバイトと研究に明け暮れていましたが、社会人になって旅行に行く金銭的余裕ができたこともあり、土日空いている時は、自然豊かな知らない土地に赴き、リフレッシュしています。
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