#10
WORK&
PERSON
INTERVIEW
PERSON
設計図から形あるものに。
製品として息を吹き込む生産技術の仕事。
製造部
大型エンジン工作課
[2009年入社]
理工学研究科機械物理工学専攻修了
学生時代、どのような活動をされていましたか。
ロボットの開発を続け、ロボコンなどの競技会にも出場していました。そのとき考えたのは、ものづくりの本質についてです。多様な装置の組み合わせであるロボットは、基礎設計通りに組み立てても、目的の機能を満たせない事態が多数発生します。重量に対して動力が足りなかったり、細かな部品の干渉が発生したり、たいていは予定通りにはいかないのです。しかし、そこからが勝負どころ。アクチュエータを工夫してみたり、部品を削ったりしながら仕上げていく作業が、私にとっては楽しかったのです。
ロボット開発の経験が、
仕事を選ぶ上でどう影響を与えたのでしょう。
ものづくりの楽しさに触れたことで、就職したら生産技術の開発に携わってみたいと思うようになりました。何もないゼロの状態から設計図を描いていく仕事も魅力的ですが、私にとってはものづくりの後工程である「図面を実際の製品に仕立てていく」仕事のほうが面白そうであり、その分野のプロフェッショナルになりたかったのです。念願が叶い、今は相模原製造部で汎用エンジンの生産技術を担当しています。三菱重工ではさまざまな汎用エンジンをつくっており、その主要部品の機械加工工程を開発・構築していくのが主な仕事です。
生産技術の仕事には、どのようなポイントがありますか。
この仕事には大きく2つの「山」があるように思います。一つ目の山は図面に描かれた部品をどうやって量産するか考えることで、加工技術について詳しくなければいけないのはもちろん、コストや効率なども考えなければなりませんから、頭を悩ますことは多いですね。しかし、この段階できっちり詰め、ムリ・ムラ・ムダをなくすことがその製品の事業を強くすることにつながるのですから手は抜けません。
そして、次の山は工場に機械を設置してからです。さまざまな製造装置を組み合わせた生産ラインは全体で巨大なロボットのようなものなので、当然、すぐにはちゃんと動いてくれない。だから、ここからさまざまな調整を行い、品質の高い製品を効率よく生産していけるように育てていくのです。
海外とのやり取りも多いそうですが、
印象に残っている仕事をお聞かせください。
最近は海外生産をするケースが増え、私もインド南部のマイソールにある工場の支援に行ったことがあります。その地域で主要部品のサプライヤーを開拓するのが目的だったのですが、残念ながら求める加工精度を実現できるメーカーがなかなかみつかりませんでした。そこで、ある会社に通って「超仕上げ」と呼ばれる精度の高い加工の考え方から、必要となる治具や工具の使い方まで細かく指導することで彼らの製造品質を高め、現地調達を可能にしました。このときはその会社の経営者に感謝され、お礼にインドのスパイスカレーとフルーツをいっぱいもらいました。
ただ、最近では海外のメーカーも製造に関する知識や技術はかなり高いレベルにあり、油断していると日本が追い抜かれる可能性さえあります。それだけに私たちももっと勉強を続け、技術をさらに向上させなければいけないと、自分に言い聞かせています。