社員対談「エンジン愛を語ろう」

幅広い領域のエンジンを手掛ける三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)でエンジニアとして活躍する社員が語るエンジン開発の魅力。
「エンジン開発のやりがいは?」「カーボンニュートラル社会の実現に向けて今後のエンジンが果たす役割は?」「目指すべき方向は?」―。エンジン・エナジー事業部のエンジニアに、それぞれの実体験を踏まえエンジンにかける想いを聞きました。

 

機械、材料、流体、素材…エンジンは技術の集大成 日々新たな技術課題の連続

 

  • 簡単に自己紹介をお願いします。

Rikito H.
小型ディーゼルエンジンの設計業務に携わっています。インド拠点での現地部品調達の支援も担当しています。

Taro T.
一貫して開発を担っています。ガスエンジンの開発などを経験しながら、現在は非常用発電ディーゼルエンジンの開発や要素技術開発を担当しています。

Hiroki N.
小型ディーゼルエンジンの設計や性能シミュレーションを担当後、水素やアンモニア、メタノールなど次世代燃料を用いた大型ガスエンジンの設計を手掛けています。

Shoichi H.
一貫してガスエンジンを設計してきました。今はコージェネレーション設備に使われる1MWクラスのエンジン設計を担当しています。

Keisuke N.
データセンター向けなどの非常用発電装置の設計に加え、シンガポールやベトナムの生産拠点の支援も担当しています。

 

  • 早速ですが、エンジン開発の魅力や面白さ、奥の深さはどこにあるのでしょう?

Shoichi H.
エンジンって、爆発する時の燃焼やベアリングの潤滑、空気が流れる時の流体、あとはピストンが往復する際の振動や制御とか、いろいろな技術が詰め込まれた製品なんですよね。なので、日々新しい技術課題が出てくるところが、奥深くて面白い。

Hiroki N.
一人でエンジンを丸ごと仕上げなければならないので、設計はもちろん、サプライチェーンや生産技術の知識も求められます。工場内のありとあらゆる人と話しながら、一つの製品をつくっていくのは、ここでしかできない経験なのかな。

Taro T.
複数の技術が複雑に組み合わさって一つの製品になるので、これだけ知っていればいいということはなく、各々の技術のトレードオフを全体最適で考えながら一つのものをつくっていくのが、難しいと同時に面白いです。そこがエンジン開発の良さですね。

Hiroki N.
エンジンは“エンジニア”の語源でもあり、それだけ多くの技術や学問が集大成となった製品。三菱重工グループには本当に多様な製品がありますが、これだけ多くの知識を必要とするのは、エンジンの特徴ではないでしょうか。

Rikito H.
私はいろんな部品を担当しており、多くのサプライヤーの皆さんとやりとりする中で得られる知見が多いです。お客さまの車両にエンジンが搭載されて実際に動くところを見る時に、やりがいと嬉しさを一番感じます。

Keisuke N.
私の場合だと、最終製品である発電セットを見据えた形でエンジン開発の段階から携われている点が面白いですね。去年、市場に投入した新モデル『MGS3100R』は、まさにエンジンのコンセプトをつくる段階から、エンジン開発の仲間と一緒にやらせてもらいました。

 

  • 一方で、難しさや苦労するポイントは何でしょうか?

Hiroki N.
なぜ起こるのか分からない現象が毎日のように出てくるので、それをきちんと仮説を立てて検証して製品にするところでしょうか。大変ですが、そういうサイクルが好きで、この仕事が続いています。

Keisuke N.
以前と比べて燃料の制御系が全く変わり、新しいことをどこから決めていくか悩んだことがありました。何もないところから決めていくことも結構多いですね。

Taro T.
そういう時、最初から積み上げるのは苦労しますよね。環境規制やカーボンニュートラルなど社会の新しい要求に対し、従来の実績を活用しながら、どのように市場のニーズに素早く適合していくか。その点で積み上げてきた歴史は大事で、そこが当社の強いところの一つかなと。

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三菱重工グループ製エンジンの強み

 

  • 積み上げてきた歴史が三菱重工グループの強みだというお話も出ましたが、エンジン事業で競合他社より優れている点を教えてください。

Keisuke N.
私の担当する発電セットでは、心臓部であるエンジンの開発から最終製品まで自分たちで手掛けているところが大きな違いです。エンジンだけでなく、発電セットの検証を一緒にやれる点も特長ですね。

Hiroki N.
エンジンに搭載されるターボチャージャ(注)はすごく重要な部品ですが、これを内製している点は強みですね。また、コアとなる要素技術も、取引先だけではなく、自社できちんと保有しています。外部環境が大きく変わる中、将来に向けたロードマップを描いて持つべき技術には投資しています。

Rikito H.
生産維持という私の立場からは、やはり三菱ブランドとしての信頼性の高さ。小型エンジンの場合は、インド現地での部品調達やインドからの出荷によって、性能確保とコスト削減を両立できているのも大きいです。

  • エンジンの排気ガスを利用した圧縮空気をエンジンに送り込み、出力を上げる装置
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市場の転換期を前に、これから求められるものとは

 

  • エンジン事業を取り巻くトレンドや外部環境はどうなっていますか?

Hiroki N.
市場は今後、燃料が変わる転換期を迎えます。現在は軽油や天然ガスが主流ですが、一足飛びに水素100%で燃焼するエンジンへの入れ替えを提案しても、お客さまは困ってしまうかもしれない。インフラの整備状況に合わせて、お客さまの需要を満たしながら、どのようなステップでカーボンニュートラルを実現していくか、連続的に現実的に価値を提供していくことが重要だと思います。

Shoichi H.
水素混焼の試験は実施済みですし、水素専燃の実証試験も始まる予定です。バイオガスはすでに製品化していて、アンモニアやメタノールへの対応も進めています。どの燃料が主流になるか分からない中、市場の変化に備えていろいろなメニューを準備しておかなければならない。要素技術と機種開発の両方を並行して進めています。

Hiroki N.
確立された信頼性のもとで、様々な燃料に対応できる柔軟性がエンジンの長所です。ハード、ソフトに小さな変更を加えるだけで効率よく動力を得ることができます。従って、燃料変化に対する計画も立てやすいので「30年度に水素100%に移行したい」というお客さまに対して具体的な道筋を提案できるのは、エンジンの強みです。

Shoichi H.
エンジンは比較的サイズが小さく負荷の追従性も高いので、他の機器と組み合わせて使いやすいんですよね。『EBLOX(イブロックス)』に代表されるように、環境に優しい再生可能エネルギーの比重が高まる中でエンジンは電力の平準化にも役立つため、さまざまなシーンで社会に貢献できます。

Rikito H.
環境以外では、鉛の使用が禁止されるなど材料への規制も厳しくなっています。材料・部品を別のものに変える、調達を工夫するなどの対応も必要です。

Keisuke N.
また、社会のデジタル化が進み、データセンターも大規模化しているので、そのためのバックアップ電源として、高出力な非常用ディーゼルエンジンが求められていますね。

Shoichi H.
ガスエンジンは、特に東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)の観点から緊急電源としての重要性が高まっています。実際に過去の地震では、当社製ガスエンジンのおかげで事業を継続できたお客さまもいらっしゃいました。パイプラインが強靭で簡単に壊れないので、電線が切れてもガス管がつながっていれば電気を起こせるのが、ガスコージェネレーションの特長です。

Hiroki N.
そのほか、労働力の減少も挙げられます。人手不足によりメンテナンスをする人も減っている中、製品にIoTを導入し、自動監視やデータ収集を行っています。必要なパラメーターを監視して何か動きがあれば、「この時期にあの部品を替えましょう」と故障する前に提案できる仕組みです。

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多様な技術の組み合わせで夢のあるエンジンをつくりだし、社会に貢献したい

 

  • 最後に、皆さんの今後の目標や夢を教えてください。

Keisuke N.
今、世界では約10億人が非電化の地域に住んでいると聞きます。壮大かもしれませんが、その人たちへ三菱エンジンから電力を届けていきたいです。

Taro T.
私も同じです。社会インフラに欠かせないエンジンは、社会貢献を強く実感できる製品。世界中で電力を必要としている地域や人たちのためにも、求められるエンジンを必要な時間軸で開発できる技術者として、自己研鑽を重ねていきたいです。

Rikito H.
これからも信頼性の高いエンジンをつくり続けていきたい、究めたいというのが第一です。また、技術革新が進む中、新しいものを取り入れていけるようしっかりと日々学びながら成長していくことが目標です。

Hiroki N.
市場のニーズや外部環境が大きく変わる中、マーケットインの思想を忘れず、お客さまのもとに足を運び、情報収集を怠らないこと。そして、最終的にはやはりCO2フリーを達成したいです。

Shoichi H.
三菱重工グループの持つ多様な技術・製品とエンジンを組み合わせれば、私たちが社会に提案できる価値の可能性は無限大です。あとは、自分の子供も含めて次世代の人々に当社のエンジンが活躍している姿を広く知ってもらい、多くの人の役に立つような、そんな夢のあるエンジンで世の中にもっともっと貢献していきたいですね。

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カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新たなエンジン技術

 

エンジン発電設備、太陽光発電システム、蓄電池システムを組み合わせ、制御装置“COORDY”で制御するトリプルハイブリッド発電システム「EBLOX(イブロックス)」は、再生可能エネルギーの最大活用、安定的な電力供給に貢献します。

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MHIET相模原工場に設置されたEBLOX実証設備

また、水素エンジンの開発と実用化に向けた取り組みを強化しており、MHIET製のレシプロガスエンジンを改良した単気筒エンジンで、水素100%で安定燃焼できる技術を確立しました。

そして、製品化に向けた次の段階として、相模原工場内に水素専焼エンジン発電セットの実証設備および水素供給設備を導入し、本年度より6気筒500kWクラスの水素専焼エンジンを用いた検証を進め、製品化を目指していきます。

水素エンジン実証設備

水素エンジン実証設備