他にはない機械を生み出す、コーディネートという技術。
私たちが普段目にする機械や装置の多くは量産されたものですが、「1点もの」と呼ばれるようなオーダーメードの機械も社会には必要とされています。例えば、量産品を生み出すための生産設備や、災害現場など限られた条件での稼働が求められる装置などが当てはまります。MHIさがみハイテックの車両技術部には、フォークリフトや建設機械の設計、車両やエンジンの制御システムの開発を行う以外にも、そのようなニーズに応える特別なグループが存在しています。彼らは新しい発想でオリジナルの機械を生み出し、便利で安全な社会を支えています。
第1章 福島第一原発、極限の環境下で求められる装置
東日本大震災の被災地では復興が進みつつあり、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業は、これから本格化しようとしています。高い放射線量のため人間の立ち入ることのできない現場では、遠隔操作で動く建設機械やロボットが作業に従事しています。設備グループの国富が携わった「がれき吸引装置」もその一つで、建屋の解体などに伴い発生するがれきを吸い込み、粉塵が大気に拡散するのを防いでいます。
「がれき吸引装置は、無人のクレーンで大きな掃除機のようなものを吊り下げ、その下でノズルが自由に動き回る仕組みです。現場ではいかにホコリや汚染水を出さずに作業するかが求められているため、品質が保証されている技術を組み合わせて、どのようにコーディネートするかが大切です」と国富は説明します。以前に開発した遠隔操作の建設機械への給油システムは2013年に特許を取得しており、この装置も特許を2017年に取得しました。
更に、2019年に屋上スラブ解体装置及び工法の特許を4件出願中です。
このように、自分の考えた装置や工法が実物となり、特許となる仕事を担当しています。
研究開発目的ではなく、現場でまさに求められている現実的かつ効率的な機械をつくるのが、国富たちの仕事であり、ゼネコンなどの顧客と直に交渉をして、ニーズを満たす製品の提案を行い、パートナー企業の工場で製作して現場に送り出していきます。「営業活動に始まり、構想設計、詳細設計、製作、実験や検査、現場でのフォローも含めて、一貫した製品づくりを行うのが我々の業務でもあります。ゼロからものを生み出すという、他にはないものづくりに醍醐味を感じています」と、国富は日々の充実感を熱く語っていました。
第2章 三菱重工グループの枠を超えて信頼されるものづくり
設備グループという名称は、工場の生産設備の開発を長年担っていることに由来しています。例えば、三菱重工グループのエンジンやターボチャージャーなどを組み立てる生産ラインについても、設備の設計から調達、製造などトータルに対応しています。従来のエンジニアリング会社と異なるのは、一部の業務にとどまらず、ものづくりまで自らが一貫して行えるという点であり、その能力は三菱重工グループの枠を超えて、さまざまな業種の企業から機械づくりを任されるまでに至っています。
「お客様と直接やりとりしていることによって、良い評価も悪い評価も肌で感じられることに、この仕事ならではのやりがいを感じています。その一方で、機械の稼働中もフォローが必要なため、常に緊張感を持って取り組まなければなりません。私たちに求められるのはコーディネート能力であり、時間の制約もある中で、採算性などのバランスを取りながら業務を遂行していきます」と国富は言います。顧客だけでなくサプライヤーや施工業者とも協力しあい、彼自身が調整役となることで、一つのものづくりを成し遂げているのです。
勤続16年目の国富は、入社時はフォークリフトの設計に配属。現在の上司は、大学のOB会にて幹事をそつなくこなす国富にコーディネート能力の片鱗を見出して、設備グループにスカウトしたそうです。「自由な発想でやらせてもらえる社内の体制があり、毎日が充実しています。設計も突き詰めていくと面白いですが、私には現在の仕事が天職と言えるかもしれません」と話す国富。そのコーディネート能力を生かして、今日も新しいものづくりにチャレンジしています。
VISION
原子力関係の業務には大きな社会的使命を感じていて、引き続き携わっていきたいと思っています。お客様とも良い関係で仕事をさせていただいており、「こんなこともハイテックはできる」という評価が、別の新しい仕事につながっています。今後も信頼関係を大切にして、お客様や社会の期待に応えていきたいです。