制御・保護設計
「制御・保護設計」とは?
原子炉制御系
原子炉制御系は、過渡変化時に原子炉が停止することなく通常運転を維持・継続できるよう設計されています。
原子炉安全保護系
原子炉安全保護系は、原子炉保護設備と工学的安全施設作動設備から構成され、運転時の異常な過渡変化や事故が生じた場合に、周辺環境に重大な影響を与えることなく事象を収束させるよう設計されています。
原子炉保護設備は、運転時の異常な過渡変化や事故が生じた場合に、燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性が損なわれることがないように原子炉トリップ信号によって、原子炉の自動停止を行う設備です。工学的安全施設作動設備は、事故に際して、その異常を検知し、速やかに関連する工学的安全施設を作動させることによって、炉心の冷却を行い、格納容器バウンダリを保護し、一般公衆の安全を確保する機能を持ちます。
原子炉制御系
PWRの原子炉制御系は、定常時及び設計負荷変化時に、プラントの主要パラメータを許容範囲内に十分な減衰性をもって自動制御し、原子炉が停止することなく運転を継続できるよう設計されています。原子炉制御系には下表に示すようなものがあります。
これらの原子炉制御系が適切に動作することを確認するために、設計負荷変化時のプラント挙動を評価する動特性解析を実施します。
PWR原子炉制御系のはたらき
制御系 | 機能 |
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制御棒制御系 | 制御棒クラスタの速度を制御し、1次冷却材平均温度を所定の値に維持する。 |
ほう素濃度制御系 | 燃料の燃焼の変化などに伴う比較的緩やかな反応度変化を制御する。 |
加圧器圧力制御系 | 過渡時の1次冷却材系の圧力変化を抑制し、1次冷却材系の圧力が一定となるよう制御する。 |
加圧器水位制御系 | 出力変化などに伴う1次冷却材の体積変化に対し、加圧器水位が所定の値となるよう制御する。 |
給水制御系 | 各蒸気発生器に個別に設置され、蒸気発生器の水位が所定の値となるよう制御する。 |
タービンバイパス制御系 | 負荷の変化などに伴う1次冷却材平均温度の変化を抑制するために、蒸気発生器により発生する蒸気を、タービンをバイパスして直接復水器に送る機能を有する。 |
主蒸気逃がし弁制御系 | 負荷の変化などに伴う蒸気発生器の圧力変化を、主蒸気を大気に放出することで抑制する機能を有する。 |
制御棒クラスタ引抜阻止およびタービンランバック | 異常の拡大を防ぎ、かつ、原子炉トリップに至る前に自動処置をとるために制御棒クラスタの自動・手動引抜阻止およびタービンランバックを行う。 |
制御棒制御系
原子炉制御系の例として、制御棒制御系について紹介します。
制御棒クラスタ駆動制御信号は、1次冷却材平均温度信号、タービン負荷に比例するプログラム平均温度信号および炉出力(中性子束)信号を比較して、制御棒制御系より出力されています。
原子炉安全保護系
PWRの安全保護系は、「原子炉保護設備」と「工学的安全施設作動設備」から構成されています。
「原子炉保護設備」とは?
運転時の異常な過渡変化や事故が生じた場合に、燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性が損なわれないように、原子炉トリップ信号によって制御棒クラスタを自重で炉心に挿入し、原子炉の自動停止を行う設備です。
「工学的安全施設作動設備」とは?
事故時に、異常を検知し、速やかに関連する工学的安全施設を作動させることで、燃料の著しい破損や多量の放射性物質の放出を防止、あるいは抑制するために機能します。