知的財産活動を通じたMISSION NET ZERO/
安全・安心・快適な社会の実現
三菱重工グループは、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させ中長期的な成長を果たしていくために、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」や「安全・安心な社会の構築」などの取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。こうした重要課題に向き合い、当社の提案する製品やソリューションをお客さまに選んでいただけることが事業継続に繋がるものと考えます。
グループ全体の技術・マーケティング機能を横断的に融合するシェアードテクノロジー部門では、世の中の中長期的なニーズを調査したうえで、重要課題の解決のための研究開発に取り組むとともに、新たな社会の動きに合わせた知的財産ポートフォリオの構築を推進しています。
三菱重工グループは、世界中の人々が安心して暮らせる地球の未来のために、これからも社会価値を起点とする知的財産活動に取り組んでいきます。
01
MISSION NET ZEROの実現
三菱重工グループは2040年カーボンニュートラル宣言『MISSION NET ZERO』を発表しました。
カーボンニュートラル社会の実現は地球規模の課題であり、一世紀以上にわたる開発・製造の歴史のある火力発電システム事業や原子力発電事業をはじめとしたエネルギー供給事業など、様々な産業分野において数多くの実績を誇るリーダーとして、気候変動対策をリードしていくことが三菱重工グループのミッションであると考えています。また、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」は取り組んでいくべき重要課題(マテリアリティ)の1つとして位置づけています。
現在、高砂水素パークや長崎カーボンニュートラルパークでは、水素製造~発電にわたる水素社会実現に向けた実証研究や、化石燃料からの燃料転換による脱炭素化(アンモニア燃焼技術、バイオマス合成燃料製造技術等)など、エナジートランジション関連技術の研究開発を推進しています。
こうした事業戦略・技術開発戦略(経営方針)に対応し、三菱重工グループは、エナジートランジション関連技術に対する知財投資を近年増強しています。
三菱重工グループのエナジートランジション関連技術 保有知財件数の推移
特に、二酸化炭素の回収・貯留等のCCS・CCUS分野においては、積極的な技術開発をするとともに注目度の高い特許出願を数多く行っており、回収から転換利用までのCO2バリューチェーン全体を網羅するCO2エコシステムの実現に取り組んでいます。
CCS・CCUS分野のグローバル特許出願上位20社
- 「国際展開発明件数」とは、「発明件数」のうち、二つ以上の国・地域へ出願された発明、欧州特許庁(EPO)へ出願された発明又はPCT出願された発明の数を指す。「International Patent Family (IPF)」とも称されることがある。
出願年(優先権主張年):2010年~2021年
CCS・CCUS分野のパテントスコアマップ
- 株式会社パテント・リザルトの「Biz Cruncher」を用いて、CCS・CCUS分野(吸収液を用いたCO2の回収・貯留等。保有知財件数が10件以上。)にかかる国内特許出願を対象に作成。
(円の大きさが保有特許数を示すとともに、スコアが高いほど注目度の高い発明であることを示しています。)
CCS・CCUS分野の権利者スコアの推移
その他、原子力発電(革新軽水炉)などの非石炭利用発電やグリーンスチール(水素還元製鉄)など、三菱重工グループは、『MISSION NET ZERO』の実現に向けた気候変動対策関連技術の知財投資を強化し、グローバルな社会課題であるクリーンエネルギーの安定供給と脱酸素化に貢献します。
02
安全・安心・快適な社会の実現
豊かな暮らしの実現には、安全・安心に暮らせる社会の構築が欠かせません。
三菱重工グループには創業以来、重要インフラの構築や、宇宙・深海といった未知の世界への挑戦など、社会の発展に寄与してきた実績と、数多くの知見があります。これらを結集し応用することで、柔軟かつ強靭、そして省人化にも優れたシステムの構築を推進しています。
たとえば、自社が提供する個別機械システムの知能化・自律化にとどまらず、社会を取り巻く機械システム同士の協調、さらには社会システムの知能化を通じて“かしこく・つなぐ”ことにより、安心な社会基盤の実現を目指しています。
機械の知能化関連技術の特許ポートフォリオ
このような社会基盤(”かしこく・つなぐ”こと)の実現に向け、近年は、「機械の知能化関連技術」にかかる知財投資(特許出願など)、特に無人化・自律化技術の知財化を推進するなど、特許ポートフォリオの強化に取り組んでいます。
当社グループの機械の知能化関連技術の特許ポートフォリオ
- VALUENEX株式会社の「VALUENEX Radar」を用いて、三菱重工グループの保有知財(国内)を、特許公報に記載された技術用語に基づいて俯瞰図化(左図)。集中的に出願投資している技術分野が暖色で表示されます。
- 無人化・自律化技術や異常予兆技術など「機械の知能化関連技術」にかかる知財投資が強化されています(右図:暖色領域が増加)。
また、三菱重工グループが保有する「機械の知能化関連技術」にかかる特許群のスコアは上昇傾向にあり、保有する特許群が年々注目度を高めています。これからも、「安全・安心・快適な社会」の実現に向け、世の中の様々な社会システムを“かしこく・つなぐ” 「機械の知能化関連技術」にかかる特許群の強化を推進します。
機械の知能化関連技術にかかるパテントスコアマップの推移
- 株式会社パテント・リザルトの「Biz Cruncher」を用いて、三菱重工グループの機械の知能化関連技術にかかる国内特許出願を対象に作成
03
ブランド価値の向上
カーボンニュートラルなどの社会的課題に対応した三菱重工グループの製品・ソリューションサービスを、様々なお客様に広く理解いただくため、また、模倣品防止のため、技術ブランドの価値を高める取り組み(商標登録の強化、など)を推進しています。
三菱重工グループのDX基盤を支える主なソリューションブランド
04
知財マネジメント体制
三菱重工グループは、三菱重工CTOの指揮の下、各事業部門(国内外)の知的財産責任者による知財マネジメントの推進により、コングロマリットである強みを生かし有機的に連携した知財活動を運営しています。
グループ共通の知的財産方針に基づいて、各事業部門が社会価値を起点とする知財戦略を策定し、優位性の高い独自技術の知財化と知的財産ポートフォリオの整備を推進することにより、MISSION NET ZEROや安全・安心・快適な社会の実現に貢献します。
教育・人材育成
三菱重工グループの知的財産要員の育成と活用については、国内・海外における知的財産研修や、事業部門、研究開発部門との社内ローテーションなどを計画的に行い、個人及び知的財産部門全体の能力アップ、必要な専門能力の取得に繋がるよう努めています。
三菱重工グループの保有特許
三菱重工グループは、社会・産業インフラや陸・海・空で国の安全保障を支える革新的な製品・技術開発と世界への提供を通じて、さまざまな社会的課題の解決に取り組んでいます。
当社のグローバル事業を支えるため、日本のみならず、米国や欧州、中国などの主要国を中心とした海外出願を強化しています。
三菱重工グループの保有特許数
- 数値は各年末時点での三菱重工+主要連結子会社の件数。欧州の数値は欧州広域特許(権利継続中)の件数。
05
社外表彰
- Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター
三菱重工業は、世界的な情報サービス企業であるクラリベイト社による第13回「Clarivate Top 100 Global Innovators 2024」に選出されました。世界のイノベーション・エコシステムの頂点に立つ企業/研究機関を年に1度選出するものであり、当社の受賞は、2012年の初受賞から12年連続となります。
本アワードは、企業が保有する特許データを基にしたクラリベイト社独自の知財・特許動向分析によって実施されており、エコシステムとその影響を正確に把握できる指標として世界のイノベーターから支持を受けています。
- IAM's Asia IP Elite
三菱重工業は、2023年7月、国際的知財メディアであるIAM(Intellectual Asset Management)が選考する「IAM‘s 2023 Asia IP Elite」に初選出されました。エンジニアリングとものづくりのグローバル企業として、米国、欧州、中国など海外での特許出願を戦略的に増加させている点において評価を得られ、受賞につながりました。
- 全国発明表彰(主催:公益社団法人 発明協会)
全国発明表彰は、1919年(大正8年)に、科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に始まった、歴史ある発明表彰制度です。三菱重工グループは、1971年(昭和46年)に皇室の御下賜金を拝受する、同表彰の最高賞である恩賜発明賞を受賞しています。
三菱重工グループは、最近では以下の賞を受賞しています。
年度 | 受賞名 | 特許番号 | 発明の名称 |
---|---|---|---|
2016 | 発明賞 | 第5138643号 | タービン発電機、タービン発電機の制御方法、制御装置、および該タービン発電機を備えた船舶 |
2009 | 発明賞 | 第3565331号 | 高強度低合金耐熱鋼(住友金属工業株式会社殿との共有特許) |
2005 | 発明賞 | 第2502132号 | 形状記憶ポリウレタンエラストマー成形体 |
- 地方発明表彰(主催:公益社団法人 発明協会)
1921年(大正10年)に開始した地方発明表彰は、実施されている優れた発明、考案または意匠を生み出した技術者・研究開発者を顕彰するものです。地方発明表彰は、その発明が地域産業にいかに貢献しているか、という観点から、全国を8地方(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州)に分けて実施されています。
三菱重工グループの最近の主な受賞歴は以下の通りです。
年度 | 地方 | 受賞名 | 特許番号 | 発明の名称 |
---|---|---|---|---|
2023 | 中国 | 島根県発明協会会長賞 | 第7083287号 | 車両セキュリティ感度調整制御装置 |
2022 | 近畿 | 特許庁長官賞 | 第5291790号 | ガスタービンの燃焼振動減衰装置 |
中国 | 島根県発明協会会長賞 | 第6914099号 | 農用トラクタのフロントグリル構造 | |
九州 | 長崎県発明協会理事長賞 | 第6896564号 | バイオマス燃料粉砕ミル | |
2021 | 中国 | 広島県発明協会会長賞 | 第6718525号 | 低煤塵排ガス処理システム用熱交換器 |
近畿 | 京都発明協会会長賞 | 第6692564号 | バッテリフォークリフトの走行制御方法 | |
兵庫県発明協会会長賞 | 第6399894号 | ガスタービンの排気部冷却構造 | ||
2020 | 関東 | 埼玉県発明協会会長賞 | 第5973980号 | 腕上げ状態での作業を楽にする補助器具 |
中国 | 島根県知事賞 | 第6389707号 | トラクタの自動四駆切換制御 | |
広島県知事賞 | 第6025983号 | ボイラ高効率化に貢献する低NOx燃焼装置 |
- グッドデザイン賞(主催:公益社団法人 日本デザイン振興会)
1957年(昭和32年)に創設された総合的デザイン評価・推奨制度で、単に美しいデザインを選ぶのではなく、そのデザインによって生活や産業の質が向上するかどうかを総合的に判断し、社会全体を豊かにする「よいデザイン」を顕彰するものです。
三菱重工グループの最近の受賞歴は以下の通りです。
年度 | 受賞名 | 受賞企業 | 発明の名称 | 受賞デザイン |
---|---|---|---|---|
2022 | グッドデザイン・ベスト100 | 三菱重工業(株) | プラント自動巡回点検防爆ロボット 「EX ROVR シリーズ"ASCENT"」 |
|
2021 | グッドデザイン賞 | 三菱重工業(株) | AM-Zone® 「AM-Zone® アディティブマニュファクチャリング オープンファクトリー」 |
|
グッドデザイン賞 | 広島高速交通(株) 三菱重工エンジニアリング(株) |
新交通システム車両 「 アストラムライン7000系」 |
||
2020 | グッドデザイン賞 | 三菱ロジスネクスト(株) | 電動式カウンターバランスフォークリフト 「ALESISシリーズ (0.9t-3.5t)」 |