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三菱重工業は、日本初の宇宙ステーション補給機HTVとそれを打ち上げたH-IIBロケット、世界初のエンジン式ハイブリッドフォークリフト「GRENDiA EX Hybrid」など18件を、「Best Innovation(ベスト イノベーション)2009」に選定した。
その結果、当社の高い技術力を示した新製品賞には、排熱回収タービンにエンジン排気ガス駆動のタービンを組み合わせ、世界初の技術で制御する複合型舶用エネルギー回収システムなど4件が、創意工夫により生産性や業務効率向上に寄与する取り組みを対象とした新業務プロセス賞には、ターボ冷凍機のバリューチェーンのIT化システムなど5件が選ばれた。また、世界初の革新的な技術が表彰対象となる特別賞/新技術賞には、大規模連成シミュレーション技術など5件が選定され、社会的にも大きな話題を呼んだ次世代型超省エネ住宅「エコスカイハウス」などの4件には、当社の技術力を広く一般にアピールしたとして特別賞/イメージアップ賞が与えられた。
今回の受賞案件は以下の通り。
【新製品賞】
1. 新型舶用排熱回収システム(MERS)
2. 07式垂直発射魚雷投射ロケット
3. H-IIBロケット及び宇宙ステーション補給機HTV
4. ドバイメトロプロジェクト
【新業務プロセス賞】
1. 造船所における鋼材・部材管理システムによる部品所在管理の効率化
2. ターボ冷凍機のバリューチェーンのIT化システム
3. コンプレッサIT武装(BOM及び三次元デジタルデータ)によるバリューチェーン全体の業務プロセス改革
4. サービス業務支援システムの構築による顧客巡回計画立案・点検業務の効率化
5. Open Book方式による長期供給契約
【特別賞/新技術賞】
1. 構造体と流体が相互に干渉し合う複雑な振動現象の高精度解析を可能とする大規模連成シミュレーション技術
2. 画像演算処理装置(GPU)を利用したターボ機械流動大規模シミュレーション技術
3. 変形を伴う複数の可動部品が組合わされたモジュール部品の挙動を解析できる高精度・高速マルチボディダイナミクス技術
4. 建造物の影響を精度良く解析できる広域気象・大気拡散シミュレーション技術
5. 火力発電プラント・クリープ損傷配管延命化のための熱処理技術
【特別賞/イメージアップ賞】
1. 日本郵船殿向 高度環境対応省エネ型自動車運搬船「AURIGA LEADER」
2. 北海道電力殿向 泊原子力発電所3号機
3. ハイブリッドフォークリフト「GRENDiA EX Hybrid」
4. エコスカイハウス
受賞案件の概要は次の通り。( )内は担当部門。
【新製品賞】
◇新型舶用排熱回収システム(MERS)
(長崎造船所/長崎研究所)
排熱回収蒸気タービンに排ガス駆動パワータービン(出力タービン)を結合するとともに、世界初となる新たなパワータービン制御方法と、最新の高効率過給機MET-MAシリーズとの組み合わせにより、排気エネルギーをさらに高効率で利用できるようにした。
◇07式垂直発射魚雷投射ロケット
(長崎造船所/航空宇宙事業本部/名古屋航空宇宙システム製作所/名古屋誘導推進システム製作所/長崎研究所)
パラシュートの採用により、超音速からの減速を実現し、ロケットモーター推進力中断技術などを採用することで、任意の目標点に着水させることができる。今後の海上自衛隊護衛艦で、装備が予定されている。
◇H-IIBロケット及び宇宙ステーション補給機HTV
(名古屋航空宇宙システム製作所/名古屋誘導推進システム製作所/神戸造船所/汎用機・特車事業本部/交通・先端機器事業部/機械事業部/長崎研究所)
H-IIBは静止トランスファー軌道に約8トンの打ち上げ能力を発揮する日本最大のロケットで、2009年9月11日に1号機(試験機)の打ち上げに成功。同ロケットに搭載されたHTV実証機は日本初の宇宙ステーション補給機として、同9月18日に国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功して物資輸送ミッションを果たした。HTVは、近く退役が予定される米スペースシャトルを除き、船外物資の輸送が可能な唯一の宇宙船として、日本の宇宙開発事業に新ステージをもたらすと同時に、国際貢献への期待も大きい。
◇ドバイメトロプロジェクト
(交通・先端機器事業部/高砂研究所/広島研究所)
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで2009年9月9日に一部が開業した全自動無人運転鉄道システム「ドバイメトロ」は、アラビア湾岸諸国初の都市交通システムで、全自動無人運転の鉄道システムとしては世界最長となる。当社は車両、信号・通信システム、高圧受変電設備、軌道設備、車両基地など鉄道システム一式の供給・建設を、三菱商事と担当している。
【新業務プロセス賞】
◇造船所における鋼材・部材管理システムによる部品所在管理の効率化
(下関造船所/長崎研究所/高砂研究所)
造船業界で初めて、ICタグと携帯小型端末(PDA)を用いた鋼材・部材管理を採用。データ入力自動化によるミス撲滅・工数削減とともに、不足部材の発生を大幅に削減した。ICタグとリライタブルシートの組み合わせで、過酷な屋外環境を含む現場作業に適したシステムを構築できている。
◇ターボ冷凍機のバリューチェーンのIT化システム
(冷熱事業本部/高砂研究所)
モジュラーデザイン(MD)、デジタルエンジニアリング・イニシアティブ(DE-I)で製品の標準化・業務の整流化を行い、引合・設計・調達・工程管理・サービスまでのバリューチェーン全体のIT化を進め、生産性向上と利益増大に寄与した。
◇コンプレッサIT武装(BOM及び三次元デジタルデータ)によるバリューチェーン全体の業務プロセス改革
(機械事業部/エム・エイチ・アイ・ターボテクノ株式会社)
販売-設計-製造-検査-サービスの各プロセスで処理する製品構成・特性情報(BOM)を連係させ、さらに設計三次元デジタルデータの活用により、リードタイムを42%短縮し、コストを15%削減することに成功した。
◇サービス業務支援システムの構築による顧客巡回計画立案・点検業務の効率化
(広島研究所/高砂研究所/機械事業部/紙・印刷機械事業部)
コンプレッサや紙工機械に関するサービス業務活動を強化するために、共通的な支援システムを構築した。顧客情報を的確に把握し、効率的な点検・運転診断業務や報告書・提案書作成をサポートする機能を付加・更新することにより、少ない陣容でも巡回でき、サービス業務効率化と高い顧客満足度が確保できる対応力強化を実現した。
◇Open Book方式による長期供給契約
(米国三菱重工業株式会社/環境・化学プラント事業部/広島研究所)
米国向け環境事業(排煙脱硫装置、CO2回収装置)において、コスト情報を発注者側と請負者側が双方“ガラス張り”に共有できるOpen Book方式を導入。大手電力顧客との長期供給契約を実現し、顧客・当社共に低リスクで安定した事業遂行体制と利益が確保できるビジネスモデルを確立した。その特長は、客先と共同での仕様決定、有償によるTarget Cost Estimate(目標原価見積)作成、コスト&フィーによる実績精算にある。
【特別賞/新技術賞】
◇構造体と流体が相互に干渉し合う複雑な振動現象の高精度解析を可能とする大規模連成シミュレーション技術
(高砂研究所/名古屋航空宇宙システム製作所/名古屋誘導推進システム製作所)
従来、構造体と内外部流体の相互干渉の影響把握では、大規模実験や経験的評価に頼っていたが、今回、系全体の振動挙動解析を可能とし、1,000万点規模に及ぶ実用的な大規模連成解析技術を開発した。H-IIBロケット打ち上げ時の横風に対する安全性評価や橋梁耐風設計などの検証に貢献した。
◇画像演算処理装置(GPU)を利用したターボ機械流動大規模シミュレーション技術
(高砂研究所)
GPUを用いてターボ機械用に世界初の大規模な流動解析システムを開発した。従来、不可能だった6,000万点に及ぶ大規模な解析を可能とし、かつターボ機械の流動解析時間を従来比1/20以下に短縮した。遠心圧縮機、軸流圧縮機などターボ機械の新しい設計や新製品の短期開発に大きく貢献している。
◇変形を伴う複数の可動部品が組合わされたモジュール部品の挙動を解析できる高精度・高速マルチボディダイナミクス技術
(高砂研究所/広島研究所)
複数の可動部品が組合わされたモジュール部品の挙動を解析するマルチボディダイナミクス技術※1を高度化し、変形を伴う可動部品の解析において、計算時間が従来比最大1/100となり、製品開発として実用的なレベルにまで大幅に短縮できる手法を確立した。同技術を用い、紙工機械や原子力機器の試作部品削減と開発期間短縮に貢献している。
◇建造物の影響を精度良く解析できる広域気象・大気拡散シミュレーション技術
(長崎研究所/原子力事業本部/航空宇宙事業本部)
広域から狭域の建造物付近までの大気拡散挙動の同時解析は、技術的な課題も多く、これまでは狭域のみを対象に風洞実験などに頼っていたが、今回、広域気象シミュレーション結果を建造物周辺の境界条件に利用することにより、計算時間を従来比1/4,000以下にまで短縮して高速計算できる手法を構築した。気象モデルを応用することにより、ビル風など建造物付近の非定常な大気拡散挙動を精度良く予測できるようになった。原子力施設の緊急時やテロ災害時の被害拡大状況予測などに大きく貢献している(日、米、中、台、韓で特許登録済み)。
◇火力発電プラント・クリープ損傷配管延命化のための熱処理技術
(長崎研究所/原動機事業本部/長崎造船所)
火力発電プラントの定期検査時に、現場でクリープ損傷※2が発生した高温配管に熱処理を行うことにより、余寿命を従来比約3倍にまで再生延命化できる技術を開発した。現場施工により、定期検査工期も従来比約1/4以下に短縮でき、定期検査サービス事業拡大への貢献が期待できる(日本で原理特許取得済み)。
※1 マルチボディダイナミクス技術:様々な剛体や弾性体の運動シミュレーションや機構解析を実行する運動解析技術のこと。
※2 クリープ損傷:金属材料に高温で一定の応力を負荷すると、応力が降伏応力(永久変形が残らず元の形に戻る応力の限界値)以下でも材料の変形が時間とともに進行する。同変形過程で生じる材料の変化や劣化(硬さの変化や組織の変化など)をクリープ損傷という。
【特別賞/イメージアップ賞】
◇日本郵船殿向 高度環境対応省エネ型自動車運搬船「AURIGA LEADER」
(神戸造船所)
太陽光発電設備とインバーター制御冷却水システムを搭載した、地球環境に優しい省エネ船として、マスコミが広く紹介。当社の技術力PRに大きく貢献した。
◇北海道電力殿向 泊原子力発電所3号機
(原子力事業本部/神戸造船所/高砂製作所/高砂研究所)
国内の加圧水型軽水炉(PWR)としては12年ぶりに、2009年12月22日から営業運転に入った最新鋭の原子力発電プラント。制御・保護設備の総合デジタル化、国内最大級の54インチ翼低圧タービン採用、3D-CADの全面導入によるフロントローディングの徹底、超大型クレーンによる原子炉格納容器半球部一体化工法適用など、最新技術の導入により経済性・運用性に優れたプラントを実現し、当社の総合技術力をアピールするとともに、エネルギーセキュリティ確保とCO2削減に貢献する企業としてのイメージアップに寄与した。
◇ハイブリッドフォークリフト「GRENDiA EX Hybrid」
(汎用機・特車事業本部/原動機事業本部/長崎造船所/高砂研究所)
ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせた、エンジン式では世界初のハイブリッドフォークリフトで、自社開発のリチウムイオン電池を搭載。燃費削減率は従来比39%に達する。独自の先進技術による高い環境性能と経済性が話題を呼んだ(『GRENDiA』ロゴマークは商標登録済)。
◇エコスカイハウス
(菱重エステート株式会社)
太陽の光・熱や風力など自然エネルギーで97%以上が賄える次世代型超省エネ住宅として、2009年2月から横浜市内で行われているモデルハウスによる実証試験が広く紹介され、三菱重工グループ全体の環境への取り組み姿勢を広く社会にアピールした。その中核技術であり、太陽光発電と太陽熱回収とを複合化した住宅屋根置きユニット「エコスカイルーフ」も製品化した(菱重エステートにより『エコスカイハウス』は商標登録済、『エコスカイルーフ』は商標登録出願中)。
【高度環境対応省エネ型自動車運搬船「AURIGA LEADER」】 【ハイブリッドフォークリフト「GRENDiA EX Hybrid」】
【北海道電力殿向 泊原子力発電所3号機(提供:北海道電力)】
担当窓口:企画部
三菱重工グループについて
三菱重工グループは、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして、 1884年の創立以来、 社会課題に真摯に向き合い、人々の暮らしを支えてきました。
長い歴史の中で培われた高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現 に向けたエナジートランジション、 社会インフラのスマート化、サイバー・セキュリティ分野 の発展に取り組み、 人々の豊かな暮らしを実現します。
詳しくは:
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