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三菱重工業は、米国のエンジニアリング大手、フルア社(Fluor Corporation)と共同で、同国のディベロッパー、SCSエナジー社(SCS Energy LLC)が進める、CO2回収・貯留(CCS)機能を備えた石炭ガス化複合発電(IGCC)設備建設プロジェクトの基本設計(FEED)を受注し、業務を開始した。CCS機能を備えた商業規模のIGCC発電所の建設は世界で初めて。回収したCO2は肥料の生産と原油増進回収(EOR)に用いる。
このHECA(Hydrogen Energy California)プロジェクトは、同国で豊富に産出される石炭をガス化して発電する高効率のIGCCと、石炭ガスから肥料を製造する肥料プラント、石炭ガス中から回収したCO2を活用するEORを組み合わせたもので、複合プラントは、カリフォルニア州中南部の都市ベーカーズフィールドに建設される。
IGCCは、当社独自技術による酸素吹きガス化炉を採用したもので、発電出力は40万kW。また、肥料生産プラントの生産量は2,500トン/日で、総事業費は3,000億円を超える規模となる見通し。クリーン・コール技術の採用に対して、米国エネルギー省も資金援助を行なう。
今回のFEEDは、当社原動機事業の米国拠点であるMPSA(Mitsubishi Power Systems Americas, Inc.)を通じて受注した。FEEDの契約期間は2013年3月までで、その後のEPC(設計・調達・建設)契約は2013年半ばとなる見通し。プロジェクトの完成は2017年末の計画。
IGCCは、ガス化炉内で微粉化した石炭をガス化し、コンバインドサイクル発電(C/C)と組み合わせて発電するシステム。従来の石炭火力に比べ発電効率が高く、CO2はもちろん、SOx、NOx、煤煙などの排出量が少ないのが特徴。
当社は、空気吹きガス化炉・酸素吹きガス化炉双方の独自技術を有する、世界で唯一の企業。このうち、空気吹き技術は、発電用として世界最高の送電端効率を実現し、わが国電力会社10社の出資によるクリーンコールパワー研究所(福島県いわき市)に納入した勿来実証プラント(発電出力25万kW)にも採用されている。同プラントはすでに1万6,000時間を超える運転を実現し、電力不足が懸念された昨夏も全負荷運転を継続して、高い信頼性と運用性を実証している。今回のHECAプロジェクトでは発電プラントに加えて肥料プラントが併設されることから、両技術の中から酸素吹きを採用した。
CO2回収は、石炭を一酸化炭素と水素にガス化したのち、一酸化炭素を蒸気とのシフト反応によりCO2と水素に変換して、吸収液で分離・回収する。
回収したCO2は、アンモニアと合成して尿素合成の増産に用いる一方、生産性が落ちた油層に圧入して原油の生産増加をはかるEORに利用する計画。
今回のFEED受注は、当社の優れた技術が高く評価されたことによる。当社は今後、FEEDに全力で取り組み、HECA IGCCプロジェクトのEPC契約受注を目指すとともに、石炭の有効利用および地球温暖化ガスの大幅削減を実現するIGCCおよびCCS技術の世界市場投入を一層積極的に推し進めていく。
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