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舶用ディーゼルエンジンのフルスケール試験設備が完成
世界的な環境規制に対応する各種技術の検証に活用

発行 第 5231号
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 三菱重工業が、神戸造船所(神戸市兵庫区)内に建設を進めてきた舶用低速2サイクルディーゼルエンジンのフルスケール試験設備「4UE-X3」が、このほど完成した。海運業界で今後適用される厳しい環境規制に対応する多様な技術検証などに用いられる設備で、現在開発に取り組んでいるデュアルフュエルエンジン「UEC-LSGi」の実証試験にも活用される。

 完成を記念して現地では9日、試験設備の披露式が開催された。式典には、国土交通省および日本郵船、商船三井、川崎汽船の方々をはじめとする多数の海運・造船・舶用業界関係者が列席、当社からは和仁正文原動機事業本部長が出席した。

 完成した試験機はシリンダ径60cmで4気筒の電子制御式。当社の舶用低速ディーゼルエンジン「三菱UE機関」UEC60LSE-Ecoをベースにしたもの。2016年以降の新造船搭載エンジンを対象として、窒素酸化物(NOx)排出量の80%削減を義務付ける国際海事機関(IMO)の第3次規制をクリアするための各種技術の検証などに用いられる。

 IMOの3次NOx規制については、当社はすでに選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction※1)システムを用い、実船試験でNOx排出量の80%削減を達成し、実用化に向けた目処付けを完了させている。今回の試験設備ではさらに、排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation※2)の実機サイズでの技術検証を行なっていく。

 今後ますます強まっていく省エネ、コンパクト化などのニーズに応えるための、エンジン本体の新構造や新技術の開発についても、この試験設備を用いて開発を加速させる計画。また、当社の保有する幅広い舶用機械製品をパッケージで提案する「プロジェクト“MEET“(Mitsubishi Marine Energy & Environmental Technical Solution System)」の一環であるORC(Organic Rankine Cycle※3)といった排熱回収技術の開発についても検証していく。

 当社は現在、従来の重油に加え、天然ガスも燃料として使用できるデュアルフュエルエンジン「UEC-LSGi」の開発を進めているが、これについても、この試験設備を用いて実証を行っていく方針。

 なお、試験設備に隣接して、エンジンの主要部品を分解・整備できるトレーニング設備やトレーニング専用の実習室などを設置しており、顧客へのオペレーション・メンテナンスのトレーニングにも活用していく。

 当社は、舶用低速ディーゼルエンジンの世界三大ライセンサーのひとつであり、本試験機の活用によって、今後も業界をリードする製品・技術の開発を推し進めるとともに、唯一の国産ブランドとしてのプレゼンスを向上させていく。
試験設備「4UE-X3」の諸元
シリンダ数 4
シリンダ口径(mm) 600
ピストンストローク(mm) 2,400
正味平均有効圧力(bar) 21.0(初期仕様)
出力(kW) 9,970
速度(rpm:回転/分) 105

※1 SCR:排ガス中に還元剤を噴霧し、排ガスが触媒を通過する際に排ガス中のNOxを還元させるシ ステム。
※2 EGR:主機関排ガスを洗浄後に再循環させて、主機から排出される排ガス中のNOxを低減させるシステム。
※3 ORC:家庭用エアコンなどにも利用されている低沸点媒体を用いた廃熱回収装置。 

 

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