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【ポイント】
◆ 核融合実験炉イーター用の世界最大級の超伝導コイルが世界で初めて完成。
◆ ビゴITER機構長は、ITER中枢機器の記念すべき第一号機の完成に感謝し、製造技術を賞賛。
◆ 極低温用特殊ステンレス製の大型・厚肉(約230mm)構造物の難溶接技術を確立し、高さ16.5m、幅9m、総重量300トンの巨大な超伝導コイルに対し1万分の1以下の高精度での製作を実現。
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)核融合エネルギー部門及び三菱重工業株式会社(取締役社長 泉澤清次。以下「三菱重工」という。)は、核融合実験炉イーター(以下「ITER」という。)のための世界最大規模の超伝導コイルであるトロイダル磁場コイル(以下「TFコイル」という。)を完成させました。
世界初のITER用TFコイルの完成を記念し、三菱重工の二見工場においてITER機構のベルナール・ビゴ(Bernard Bigot)機構長や文部科学省の青山 周平大臣政務官、国会議員、関係経済団体の関係者、学識経験者の方々によるご列席、量研の平野 俊夫理事長ら、三菱重工の泉澤 清次社長、加藤 顕彦執行役員原子力事業部長らの出席による「完成披露式典」が開催されました。
このTFコイルは建設中のITERにおける中枢機器の記念すべき第一号であり、この完成によって現地での核融合炉建設が大きく前進します。本TFコイルは、神戸港から南フランスに向けて積み出され、2025年のITERの運転開始に向け、同工場から順次5基のTFコイルを出荷する計画です。今回のTFコイル初号機の完成を弾みとして、世界の持続的発展のために非常に重要な技術開発に取り組むITER計画を、日本の産学官を挙げて、一層主導的に推進していきます。
<参考資料>
【研究の背景】
ITER計画は、核融合エネルギー(注)の実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、2025年の運転開始を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・組立て等の重要な役割を担っており、量研はITER計画の日本国内機関として機器等の調達活動を推進しています。
ITERのTFコイルは、高さ約 16.5m、幅約 9m、重量約 300トンのD型の超伝導コイルであり、18基が真空容器を取り囲むように放射状に並び、高温かつ高密度のプラズマを閉じ込めるための最大12テスラの強力な磁場を発生させます。ITERでは、TFコイルを19基(予備1基を含む)製作し、そのうち9基(予備1基を含む)を日本、10基を欧州が分担して製作します。TFコイルの内側構造物は、全19基分を三菱重工の二見工場で製作。今回の初号機をはじめ5基分については、巻線部を三菱電機が製作し、外側構造物は韓国で製作して、二見工場で一体化することにより完成体にします。
【今回の成果】
ITERのプラズマ閉込めのために、高精度で高い磁場(12テスラ)が必要で、このためニオブ・スズ超伝導体を用いた従来にない大きさの超伝導コイルの開発が求められていました。また超伝導状態を維持するにはマイナス269度の極低温状態で稼働する必要があるため、極低温に耐えうる特殊ステンレス鋼の構造材料とその製作技術の開発もあわせて求められていました。ITERのTFコイルはこれまでにない世界最大のニオブ・スズ超伝導コイルで、その寸法に対し、1万分の1以下の精度でコイルを巻線・製作することが必要でした。量研は、2005年からTFコイルの製作技術の研究開発を進め、三菱重工は、2012年よりTFコイル製作に参加しました。両者で協力し、ニオブ・スズ超伝導体を高精度で巻線する技術を開発し、また構造材料に極低温で高い強度を有する特殊ステンレスを使用することにより、極低温での耐久性の課題を克服しました。さらに、溶接による変形を抑制する条件を見出し、要素試験、小規模試験体及び実規模試験体による検証を行い、材料特性に適した高度な溶接技術及び加工技術等の基盤技術を確立しました。これにより、ITERで要求される高い精度での製作に成功しました。
【今後の予定】
2025年のITER運転開始に向け、二見工場からは順次計5基のTFコイルを出荷する計画です。今回のTFコイル初号機の完成を弾みとして、世界の持続的発展のために非常に重要な技術開発に取り組むITER計画を、日本の産学官を挙げて、一層主導的に推進していきます。
- 核融合とは…核融合は太陽が輝き続けられるエネルギー源であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用します。燃料となる重水素、三重水素の原料となるリチウム資源は海水中に無尽蔵にあり、核融合エネルギーはCO2を発生しません。そのため、エネルギー及び環境問題を根本的に解決すると期待されています。
以上
三菱重工グループについて
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