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南フランス・ITER向けTFコイルの最終号機が完成 大型国際プロジェクトである核融合実験炉の運転開始に向け、着実に前進

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◆ 三菱重工受注のTFコイル5基の全てが完成、本機は今月中に神戸港から出荷予定
◆ ダイバータなどITER主要機器の開発、核融合原型炉の設計・開発支援でも核融合エネルギーの実現に貢献

今回完成したTFコイル最終号機

今回完成したTFコイル最終号機

三菱重工業は、南フランスのサン・ポール・レ・デュランス市で建設が進められている核融合実験炉イーター(以下、ITER)向けに国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)から受注した、世界最大規模の超伝導コイルであるトロイダル磁場コイル(以下、TFコイル)の最終号機をこのほど完成させました。日本はITER向けTFコイル19基のうち9基の製作を担当しており、このうち当社は5基の製作を担っています。

高さ16.5m、幅9m、総重量300トンの巨大な超伝導コイルであるITER向けTFコイルには、炉内で核融合反応を起こすために必要な1万分の1以下の製作精度が要求されます。当社は、これまで培った高難度製作物の量産化技術に関する多くの知見を結集させ、世界に先駆けて2020年1月にITER向けTFコイル初号機を完成させました。完成済のTFコイル4基は、神戸港から南フランスへ順次輸送されて現地での据え付けが進められており、本機も今月中に神戸港から出荷予定です。

三菱重工はITERの運転開始に向けて、TFコイルのほかダイバータ(注1)や水平ランチャー(注2)といった主要機器の開発・製作にも取り組んでいます。また、ITER計画に続いて建設が計画されている核融合原型炉についても、設計および開発を積極的に支援することで、核融合エネルギーの実現に引き続き貢献していきます。

  • 1炉心プラズマ内の不純物を排出し、高熱負荷・粒子負荷を除去する機器です。
  • 2高周波を入射してプラズマを加熱する機器です。
出荷の様子

出荷の様子

現地据付の様子(©ITER Organization)

現地据付の様子(©ITER Organization)

<参考資料>

【研究の背景】

核融合実験炉イーター

ITER計画は、核融合エネルギー(注3)の実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、フランスのサン・ポール・レ・デュランス市でITERの建設が進められています。日本はTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・組み立てなどの重要な役割を担っており、QSTはITER計画の日本国内機関として機器等の調達活動を推進しています。ITERのTFコイルは、高さ約16.5m、幅約9m、重量約300トンのD型の超伝導コイルであり、18基が真空容器を取り囲むように放射状に並び、高温かつ高密度のプラズマを閉じ込めるための最大12テスラの強力な磁場を発生させます。ITERでは、TFコイルを19基(予備機1基を含む)製作し、そのうち9基(予備機1基を含む)を日本、10基を欧州が分担して製作します。TFコイルの内側構造物は、全19基分を三菱重工の二見工場で製作。今回の予備機を含む5基分については、巻線部を三菱電機が製作し、外側構造物は韓国で製作して、二見工場で一体化することにより完成体にします。

【今回の成果】

TFコイル

ITERのプラズマ閉じ込めのために、高精度で高い磁場(12テスラ)が必要で、このためニオブ・スズ超伝導体を用いた従来にない大きさの超伝導コイルの開発が求められていました。また、超伝導状態を維持するにはマイナス269度の極低温状態で稼働する必要があるため、極低温に耐えうる特殊ステンレス鋼の構造材料とその製作技術も求められていました。ITERのTFコイルはこれまでにない世界最大のニオブ・スズ超伝導コイルで、その寸法に対し、1万分の1以下の精度でコイルを巻線・製作することが必要でした。QSTは、2005年からTFコイルの製作技術の研究開発を進め、三菱重工は2012年よりTFコイル製作に参加しました。両者で協力し、ニオブ・スズ超伝導体を高精度で巻線する技術を開発し、また構造材料に極低温で高い強度を有する特殊ステンレスを使用することにより、極低温での耐久性の課題を克服しました。さらに、溶接による変形を抑制する製作工法を見出し、要素試験、小規模試験体および実規模試験体による検証を行い、材料特性に適した高度な溶接技術および加工技術などの基本技術を確立しました。これにより、ITERで要求される高い精度での製作に成功しました。

  • 3核融合エネルギーとは・・・核融合は太陽が輝き続けられるエネルギー源であり、地上での実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用します。燃料となる重水素、三重水素の原料であるリチウム資源は海水中に無尽蔵にあり、核融合エネルギーはCO2を発生させません。そのため、エネルギーおよび環境問題の根本的な解決策として期待されています。

Tags: カーボンニュートラル,エナジートランジション,ITER,核融合
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