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南フランス・核融合実験炉イーター向けダイバータ外側垂直ターゲット プロトタイプが完成
未来のエネルギー源への道を切り開く、核融合炉の重要部品の量産化へ大きな一歩
未来のエネルギー源への道を切り開く、核融合炉の重要部品の量産化へ大きな一歩
◆ プロトタイプ製作完了により、実機量産化に向けた準備が整う
◆ 三菱重工とQSTがイーター向け主要機器の製作で協力、フュージョンエネルギー開発を着実に推進
三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)は、南フランスで建設中の核融合実験炉イーター(以下、ITER)(注1、2)に用いられる、ダイバータの重要な構成要素である「外側垂直ターゲット」のプロトタイプの製作に2020年6月より取り組んでいます。昨年、「外側垂直ターゲットの高熱負荷試験体」がITER機構による認証試験に合格、今回、外側垂直ターゲットの実機大のモックアップとなるプロトタイプが完成し、実機量産化に向けた準備が整いました。三菱重工とQSTは、プロトタイプ製作を通じて獲得した技術を活かして、実機(注3)製作に全力を注ぎ、ITERプロジェクトの推進に貢献していきます。
ダイバータは、トカマク型をはじめとする磁場閉じ込め方式の核融合炉における最重要機器の1つです。核融合反応を安定に持続させるために、炉心プラズマ中の燃え残った燃料及び核融合反応で生成されるヘリウム(He)等の不純物を排出する重要な役割を担います。
ダイバータの熱負荷は、最大で20MW/m²に達します。これは、小惑星探査機が大気圏突入の際に受ける表面熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受ける表面熱負荷の約30倍に相当します。ダイバータは、トカマク型装置の中で唯一プラズマを直接受け止める機器であり、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などにさらされる厳しい環境下で使用される為、高融点であるものの難削材であるタングステン等の特殊な材料が用いられます。さらにプラズマ対向面には微小な形状加工が施されており、全体形状と共に、個々のプラズマ対向材の傾斜、段差、隙間には0.5ミリ以下の精度が必要となる等、高精度の製作・加工技術が求められます。QSTは革新的な研究開発力を背景にITER計画当初からダイバータの研究開発に注力しており、三菱重工の卓越した製造能力を活かして、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされるダイバータの構成要素である外側垂直ターゲット プロトタイプの製作に成功しました。
QSTは、これまでITER向けの主要機器であるトロイダル磁場コイル(TFコイル)の製作に取組み、2023年までに全てのTFコイル9基(うち三菱重工は5基を担当)を出荷しました(注4)。さらに三菱重工は、QSTがITERに納入するダイバータの外側垂直ターゲットの製作を進め、2025年度には6基分の納入を計画しています。今回のダイバータの外側垂直ターゲット プロトタイプの完成を契機に、世界の持続的発展のために非常に重要な技術開発に取り組むITER計画に、日本の産学官を挙げて一層貢献していきます。
- 1核融合は太陽が輝き続けるエネルギーの源(みなもと)であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用します。燃料となる重水素、および三重水素の原料であるリチウムは海水中に無尽蔵にあり、フュージョン(核融合)エネルギーはCO2を発生しません。そのため、エネルギーおよび環境問題を根本的に解決すると期待されています。
- 2ITER計画は、フュージョンエネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、核融合燃焼による本格運転を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はダイバータやTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTがITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進しています。
https://www.mhi.com/jp/news/211213.html - 3QSTがITERに納入する全58基中、三菱重工は発注済の18基全ての製作を担当しています。
- 4三菱重工がQSTから受注したITER向けTFコイルについて、詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.mhi.com/jp/news/210524.html
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