世界初の水素製造・発電実証施設「高砂水素パーク」
水素ガスタービンの早期商用化に向け、水素の製造から発電までにわたる技術を世界で初めて一貫して検証できる三菱重工の「高砂水素パーク」は、技術検証を通じて製品の信頼性向上を図るとともに、水素発電・製造技術の社会実装に貢献することを目的に高砂製作所(兵庫県高砂市)内につくられた施設です。次世代水素製造技術の導入を順次拡充し、ガスタービン実機での水素混焼・専焼(100%水素)の実証を行っています。

同パーク内は水素の製造・貯蔵・利用の3エリアに分かれており、2023年には「製造」エリアに、世界最大級の水素製造能力1,100Nm3/hを持つ、ノルウェーのハイドロジェンプロ社製アルカリ水電解装置を設置、稼働を開始しました。同設備で製造した水素は、「貯蔵」エリアに設置した水素貯蔵設備に貯蔵。水素燃焼の実機検証は、「利用」エリアにある実証設備複合サイクル発電所で大型のJAC形ガスタービン(45万kWクラス)、および燃焼試験設備で圧縮機駆動用に設置された中小型のH-25形ガスタービン(4万kWクラス)を使って実施されます。
水素製造では、自社技術により開発を進めている高温水蒸気電解(SOEC(注1))、AEM(注2)水電解、メタンを水素と固体炭素に熱分解することで、CO₂を出さずに水素を得るターコイズ水素製造技術についても、「長崎カーボンニュートラルパーク」で要素技術を開発したうえで、統合的に実際の運転条件で長期実証を順次行っていきます。高砂水素パークは、「作る」「貯める」「使う」バリューチェーンを構築して、水素エコシステムを実現する重要な開発拠点です。
(注1) SOEC: Solid Oxide Electrolysis Cell
(注2) AEM: Anion Exchange Membrane
エネルギー脱炭素化のキーテクノロジー開発拠点 「長崎カーボンニュートラルパーク」
三菱重工は、エネルギー脱炭素化に関する技術開発の中心拠点として「長崎カーボンニュートラルパーク」を長崎市内に設置。この施設では、研究開発・設計・製造部門が一体となって製品技術の実用化に向けて取り組んでおり、なかでも総合研究所長崎地区は当拠点の象徴ともいうべき施設で、水素製造、バイオマス合成燃料製造、アンモニア燃焼、CO₂回収に関する要素技術開発をはじめとする研究開発が行われています。
長崎造船所においては、設計・製造を担う長崎工場と、製造を担う香焼工場で培ってきた各種熱エネルギー機器の設計・製造の機能を活用しながら、製品化や事業化に向けた研究開発を加速。こうして、長崎カーボンニュートラルパークでキーテクノロジーを開発した後、水素製造・発電実証設備である「高砂水素パーク」で水素製造実証運転、水素ガスタービンと連携した発電実証を実施しています。こうした一連の要素技術開発から商用運転レベルの実証過程を経た製品を市場投入していくプロセスが、開発製品の信頼性向上につながっています。
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