水素・アンモニア発電およびバリューチェーンの構築

[ エナジートランジション ]

三菱重工グループの描く水素・アンモニアバリューチェーン

水素・アンモニアバリューチェーンの拡大のためには課題も多くあります。例えば、水素をどのように製造しどう利用するのか。直接利用するのか、それとも合成燃料に転換するのか。運搬性に課題がある水素をどのように輸送するのか、さらには製造・輸送・利用を包含するバリューチェーンをどう構築していくのかなどが挙げられます。

これらの課題に対し、三菱重工グループは様々なソリューションを提供することを目指しています。
風力発電や太陽光発電で得られた電気を使用し水素を製造する水電解装置、水素やアンモニアを燃料として直接使用することができるガスタービン、水素の直接利用に課題のある産業分野に対しては、水素を変換し合成燃料を作り出す合成燃料製造装置、あるいは運搬性に課題がある水素をアンモニアに転換したうえで輸送するアンモニア輸送船など、私たちは様々な革新的技術・製品の開発を進めており、これらはバリューチェーンを構成する要素として、重要な位置付けにあります。

一方、水素・アンモニアバリューチェーンを現実的な取り組みとして進めるためには、点としての技術・製品の提供だけではなく、線として繋げるバリューチェーンの構築が非常に重要となってきます。
私たちは、様々な企業との連携も含めて、バリューチェーンの中で技術・製品を有機的に組み合わせ、包括的にバリューチェーンを構築することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
 

水素エコシステム実現に向けた水素ガスタービン開発の取り組み

水素の製造から輸送・貯蔵、そして利用も含めたバリューチェーンにおいて、大容量かつ高効率の水素ガスタービンは、既設のガスタービン設備を大規模なリニューアルを必要とせず、最小限の改造で低炭素化あるいは脱炭素化することができるため、カーボンニュートラル社会へのスムーズな移行を図ることができると期待されています。
三菱重工グループは1970年代から、製油所や製鉄所などの副生ガスを有効活用したいというお客さまのニーズに応え、水素を含む副生ガスを扱うガスタービンを手掛けてきました。これらの産業用の燃焼器開発やオペレーションの経験を活かし、水素特有の燃焼速度の速さなどに起因する課題をクリアして100%水素専焼を実現する、次世代の燃焼方式についても開発を進めています。

大型ガスタービン向けの燃焼器では、30%水素混焼の開発が完了し、2022年には50%水素混焼の燃焼試験に成功しました。この燃焼器単体での試験成功に続き、2023年11月には高砂製作所内のGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)実証発電設備でタービン入口温度1,650℃級の最新鋭JAC形ガスタービンを使い、30%水素混焼の実証運転に成功しました。同設備にて引き続き50%水素混焼での実証運転を行う準備をしていくとともに、2030年以降に新型燃焼器を使った水素専焼ガスタービンの商用化に向けて開発を進めていきます。
また、水素よりもキャリアとしてのハンドリングに優れたアンモニアの活用も有効です。アンモニアの活用は、エネルギー安定供給と環境問題解決の両方に貢献し、エナジートランジションの着実な推進につながると考えています。燃料としてアンモニアを100%直接利用する40MW級ガスタービンシステムの開発にも着手し、2025年度以降の実機運転・商用化に向けて燃焼器の開発と実証試験を進めていきます。