開発段階からの作りこみ
空調機技術部マルチパッケージエアコン設計グループ 伊藤 槙吾
室外機1台に対して、複数の室内機を運転できるビル用マルチエアコン。伊藤さんはその室外機の設計部門に所属している。
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空調機技術部マルチパッケージエアコン設計グループ
伊藤 槙吾
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2006年
入社。冷熱事業本部空調輸冷技術部ルームエアコン設計グループに配属。5モデルの国内外ルームエアコンのフルモデルチェンジ機設計を担当2019年
空調機技術部商品企画グループに配属。上吹きビル用マルチエアコンの先行開発を担当2021年
空調機技術部マルチパッケージエアコン設計グループ主席チーム統括- 2022年現在
- 現在携わっている部署と仕事内容を具体的に教えてください。
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性能、デザイン性などを徹底的に追求しながら
工場での生産性も念頭において設計室外機1台に対して、複数の室内機を運転できるビル用マルチエアコン。伊藤さんはその室外機の設計部門に所属している。
「設計をする際は、まず市場要求を元に部品構成などをふまえた、概略の基本設計を行います。それを解析で確かめてから、問題がなければ試験機を製作。それで性能や騒音レベルが目標値に達しているか、エアコンの心臓であるコンプレッサの信頼性評価、エアコンとしての快適性評価などを行って、設計仕様を固めていきます。
量産品ですから、部品1つにも作りやすさが求められるんです。設計者は、製造者が容易に作れるかどうかも念頭におかなければなりません」現在は、次期ビル用マルチエアコンのフルモデルチェンジ機のハード設計を担当。2019年4月から構想に入り、丸4年を経て、現在量産に向けた最後の追い込みをしているという。
「今までの機種から構造内容をガラリと変え、デザイン性も重視しました。これまで積み重ねてきた知見がうまく活かせなかった部分があり、正直、今回の設計は非常に苦労しました。ようやく量産態勢まであと一息というところまできたので、最後まで頑張りたいです」
- 仕事へのこだわりや自信があるポイントを教えてください。
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これまでと同じやり方では、同じ製品しかできない
新しい発想を積極的に採用し、より良いもの作りを現在は、5人の若いメンバーを束ねるチーム統括として働く伊藤さん。設計の主となるところは若いメンバーが担当し、伊藤さんはアドバイザー的な立場で自分の経験を伝え、設計を進めている。
「若いメンバーには従来の概念にとらわれない、新しいアイデアを積極的に出してもらうことを意識しています。今までと同じことをしていたら、これまでと同じ製品しかできませんから。新しいもの、より品質の良いもの、お客様に満足いただけるものを作るためには、新しい発想に積極的に挑戦し、トライ&エラーを繰り返すことが大切だと思っています」「さらに、より良い製品の構築のために、DBT(Design Build Team)というチームも開発案件ごとに組んでいます。DBTは設計だけでなく製造や品質保証、サービスなど部署の垣根を超えたメンバーで構成されていて、私たちが作った設計図面の段階で、メンバーに見てもらい、それぞれの視点からの意見を集めることで、後戻りのない効率のよい開発を目指します。
中には「サービス性が悪い」「製造しにくい」といった、設計者の視点とは異なる意見が集まるので、大いに参考になるんです。それらを反映し修正するという作業を繰り返すことで、より良い製品を生み出すことにつなげています」
- 今後の目標や展望を教えてください。
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"環境への親和性"と"お客様のご要望"
両者を満たすエアコンを設計していきたい地球環境問題の影響で、年々規制が厳しくなっている空調業界。自動車の急速なEV化が進んでいるのと同様に、空調業界も環境負荷の低いエアコンへの転換が猛スピードで進んでいる。
「エアコンには温度を調整するために冷媒が使われていますが、地球温暖化の問題から、規制によって使用できない冷媒も増えています。地球にやさしい冷媒を求め、業界全体でも検討と試行錯誤を繰り返していますが、実用化に至るまでにはまだまだ課題が多いというのが実状です。
お客様に“これ、いいね”と言っていただけるようなポイントを持つエアコンでありながら、環境への親和性もある。そういったエアコンを設計していくことが、設計者としての使命だと思っています」