技報ダイジェスト
最新の研究開発、論文
カーボンニュートラル達成に向け暖房能力を飛躍させたルームエアコン23Sシリーズ
ヒートポンプ(以降、HP)技術を用いた暖房は、化石燃料を用いた燃焼式暖房機器と比べて温室効果ガスの排出量が少ないため、カーボンニュートラル(以降、CN)達成の主要技術として注目されている。一方、HP暖房も消費電力由来のCO2低減のため更なる高効率化や、その特性からHP暖房のウィークポイントでもある低外気温時における能力向上が求められている。
また、近年の住宅事情から、リビングにダイニングを合わせた20畳以上の空間を1台のルームエアコンで冷暖房する施工例が増えており、エアコンの大能力化ニーズが高まっている。そのような背景から、三菱重工サーマルシステムズ株式会社(以下、当社)は従来機比、13%の省エネルギー性の向上を実現し、リビング用途として6.3/7.1/8.0kWクラスをラインナップに加え、更に低外気温時の能力を大幅に向上させた寒冷地向けモデルを追加した2023年向けルームエアコンを開発した。
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- Vol. 60 No. 2 (2023) 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン特集
大幅なCO2排出量削減を実現する大容量高効率ターボ冷凍機
モントリオール議定書・キガリ改正により、HFC冷媒の規制が進むものの、新興国においては削減がいまだ開始されておらず、経済発展に伴う空調需要の増加によりHFC冷媒及びHFO冷媒両方の使用量が増加すると考えられる。そのためHFC冷媒とHFO冷媒機において殆どの機器構成を共用した最大5000Rtの大容量冷凍機を開発した。特徴として一つの冷凍機に圧縮機を2台直列に搭載したシリーズカウンターフロー(以下、SCF)配置による高効率化や、HFC冷媒とHFO冷媒の冷媒差によらない制御を組込み、冷媒の変更にも容易に対応可能とした。
また専用の台数制御盤により2台の冷凍機をSCF配置することで、プラント設備における高効率運用を可能とした。本報では、大容量高効率ターボ冷凍機の開発にあたり採用した技術について紹介する。
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- Vol. 60 No. 2 (2023) 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン特集
カーボンニュートラルに貢献する低GWPターボ冷凍機 新シリーズ“JHT-Y”
オゾン層保護を目的としたモントリオール議定書において、地球温暖化抑制のためにHFC冷媒を段階的に削減するという“キガリ改正”が2016年10月に採択された。日本ではフロン排出抑制法が施行され、ターボ冷凍機は2025年度(2025年4月1日)から、地球温暖化係数(GWP)が大きいHFC冷媒を使用した製品が規制される。三菱重工サーマルシステムズ株式会社(以下、当社)ではGWPが1未満である冷媒HFO-1234yfを使用したターボ冷凍機“JHT-Y”を新たに開発し、従来機のHFC-134a機と同等以上の性能・コンパクト性・冷凍能力範囲を達成した。本報では、JHT-Y開発に当たり採用した技術及び従来機との比較について紹介する。
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- Vol. 60 No. 2 (2023) 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン特集
コールドチェーンの地球温暖化抑制に貢献する直結式輸送冷凍機 TDJS・TDSシリーズ
地球温暖化の抑制は、さまざまな分野製品において、世界的課題として取組みがなされている。食品、医薬品、工業原材料の定温輸送インフラを支えるために、多くのトラックに搭載されている輸送冷凍機についても、その役割を果たしながら同時に地球温暖化への影響を低減していくことが求められる。
三菱重工サーマルシステムズ株式会社(以下、当社)では、定温輸送分野の温暖化抑制に貢献するため、低地球温暖化係数(以下、GWP:Global Warming
Potential)冷媒への転換、運用時のCO2排出量削減を実現する直結式輸送冷凍機TDJS・TDSシリーズ(以下、本製品)を開発したので紹介する。
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- Vol. 60 No. 2 (2023) 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン特集
ボイラからの置換えによるCO2排出量削減とランニングコスト低減の両立を目的としたヒートポンプ技術の取組み
ヒートポンプ
三菱重工グループでは,事業を通じてカーボンニュートラル達成に貢献することを最優先事項として取り組んでいる。これを達成するため,化石燃料の燃焼で得ていた熱源を電化ヒートポンプへシフトすることは有効な打ち手の一つである。三菱重工グループでは,このヒートポンプ技術を用いて,ランニングコストも低減したヒートポンプ商品を市場展開し,幅広いお客様に使用していただき,社会全体でCO2排出量削減を図っている。引き続き,これら技術開発を通じてカーボンニュートラルの達成に貢献していく。
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- Vol. 59 No. 4 (2022) カーボンニュートラル特集
カーボンニュートラルの達成に向けた電動車空調システム用大容量電動コンプレッサ
カーエアコン
カーボンニュートラルは,世界的潮流であり,その達成に向けた動きが加速している。自動車業界も例外ではなく,ハイブリッド車,電気自動車(以下,EV:Electric
Vehicle),及び燃料電池車など,車両の電動化が2000年代から始まっている。現在では,
EVの市場伸長が確実視されているが,一充電での航続距離確保が普及のキーであり,大容量バッテリ搭載は一つの解決策であるが,急速充電時のバッテリ発熱が大きな課題となっている。そのため,バッテリを適正な温度に制御する大容量の熱管理システムが必要不可欠になりつつある。
三菱重工サーマルシステムズ株式会社は,上記の背景を踏まえて,2007年にハイブリッド電気自動車空調システム用として電動コンプレッサを市場投入している。そして近年の空調用冷凍サイクルを活用した急速充電時のバッテリ適正温度維持(冷却)や,寒冷条件時のヒートポンプ暖房能力拡大,等の新たなニーズに対応するべく,高効率な大容量電動コンプレッサを新たにシリーズ展開した。これらの製品技術は,EVの実用性向上による当該車両の普及促進をとおして,自動車業界のカーボンニュートラルに向けた取組みに貢献している。
本報では,技術の中核をなす新型の大容量電動コンプレッサの特長とともに,ライフサイクルアセスメントの取組みについて紹介していく。
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- Vol. 59 No. 4 (2022) カーボンニュートラル特集
ターボ冷凍機における顧客体験価値を高めるカスタマーポータル
ターボ冷凍機
ターボ冷凍機は,主に工場空調用熱源や地域熱供給用熱源として使用されている。家庭用エアコンと同様に電気料金が運用コストの多くを占めるため,省エネが重要となるが,お客様自身で設備状態を正しく把握し,エネルギー効率の改善につなげることは難しい。さらに,長期運用になれば,保守履歴管理の難しさが加わり,効果的なメンテナンスを実施することも困難となる。これらの課題を解決すべく,三菱重工サーマルシステムズ株式会社製冷凍機を導入頂いたお客様が機器の仕様やメンテナンス計画·履歴,運転データを一元管理できるポータルサイトを構築し,お客様における運用の省力化に寄与する情報の可視化を実現した。さらに,ターボ冷凍機のIoT化と組み合わせることで,エネルギー効率·損失の可視化を行い,データに基づいた省エネソリューションの提供を開始した。
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- Vol. 59 No. 3 (2022) デジタルイノベーション特集
電源品質の悪い環境で生じる電源電圧歪みに対応可能なルームエアコン用インバータ制御の開発
インバータ
近年ルームエアコン市場においてインバータ機が拡大しており、比較的電源品質の悪い国・地域にも広がっている。電源供給が不安定な向け先では停電発生頻度が多く、対策として非常用発電機を導入している事例が多い。
発電機は商用電源に対して更に電源品質が悪い場合があり、このような劣悪な電源環境から電気回路の保護を低コストで実現する手法が必要である。
これに対して、入力電流波形から入力電流の歪みを算出し、その歪みが改善する方向へ制御することで、常態的な電源電圧の歪みがある環境でも、入力電流歪みへの影響を打ち消して、安定して動作することができるようにした。
これに加え、先述の入力電流波形より、瞬間的な過電流を検知することで、コンバータ制御の電圧振幅変調率を瞬間的に調整し過電流を抑制または即時にコンバータ制御を停止するなどの手法が導入できるようにして、従来対比でより強固な回路保護性能を実現する回路制御方式を構築した。
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- Vol. 59 No. 1 (2022) 新製品·新技術特集
冷凍機のロングライフを実現するリノベーションコントローラ
ターボ冷凍機
三菱重工サーマルシステムズ株式会社(以下,MTH)のターボ冷凍機コントローラはMTHオリジナル製品であるが,新旧での違いが大きく互換性の確保が難しいため,最新コントローラに交換することができなかった。
しかし,市場には10年以上前に発売された旧型コントローラのターボ冷凍機も多く稼働しており,これからも長く使われていく。お客様が安心してMTH製ターボ冷凍機を長期運用していただけるよう,旧型コントローラと互換性のある最新機能を有するリノベーションコントローラを開発した。
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- Vol. 59 No. 1 (2022) 新製品·新技術特集
省エネ性と快適性を両立させた調湿外気処理直膨式エアハンドリングシステム(ダイレクトX Comfort)の開発
エアハンドリングユニット
現在,ビル空調の省エネの一手法として冷房設定温度を上げることが推奨されている。しかし多くの空調機器は乾球温度制御に限られており,梅雨時には潜熱分の除湿能力が不足し,不快感を発生させる場合が存在する。この不快要因である潜熱負荷は換気による外気導入に一因があることが多い。
今回,従来の外気処理用直膨式エアハンドリングシステムに,露点温度を制御する冷却除湿機能と排熱利用再熱機能を追加した調湿外気処理直膨式エアハンドリングシステム(ダイレクトX
Comfort)を商品化した。本機は,再熱用熱源にヒートポンプ排熱を利用することで,再生用熱源に電気ヒータを用いた従来のデシカント方式対比で消費電力60%低減を達成した。
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- Vol. 58 No. 2 (2021) 物流·冷熱·ドライブシステムドメイン特集