タイへの学校支援

「良き企業市民」となるために。タイの人々と生きる学校支援。

発電所から家庭用エアコンまで、様々な機械の製造・販売を行う三菱重工。環境に配慮した製品づくりだけでなく、生産を行うタイの拠点でも人にやさしい活動を行っています。その取り組みを追いました。

  • 本コンテンツは、講談社「FRaU」2021年1月号に掲載されたものです。
MACO社の⽀援によって新しくなった⼩学校の校舎。学校の雰囲気が明るくなると⼦どもたちの笑顔も増え、それまで学校から⾜が遠のいていた⼦どもも通学するように。タイには約4万校の公⽴学校があるが、施設や教材が⼗分でなく、教育環境に問題を抱えている学校もあるという。MACO社では今後も各学校のニーズに応える⽀援を⾏っていく予定だ。

冬は暖かく、夏は涼しく、快適な暮らしをサポートしてくれるエアコンは⽋かせないもの。近年は省エネなど環境に配慮したモデルも増えているけれど、製品選びに加えて、消費者としてさらに何か社会貢献ができるとしたら、こんなに嬉しいことはない。

三菱重⼯は1884年の創⽴以来、発電所やロケットなどの巨⼤な製品からフォークリフトなどの量産品まで、様々な機械システムを提供、〈ビーバーエアコン〉のブランドで家庭⽤エアコンの製造も⾏っている。⽣活に⽋かせない社会インフラをつくる企業として、同社では早くから持続可能な製品づくりや働き⽅改⾰、社会貢献活動に⼒を⼊れてきた。

⼩学校に寄贈された遊具で遊ぶ⼦どもたち。学校に来ることが楽しくなると、勉強に対する姿勢にもよい変化が起きたそう。

その取り組みのひとつが家庭⽤・業務⽤エアコンの⽣産と販売を⼿がける中核拠点として 1988年にタイ・バンコク郊外に設⽴したMitsubishi Heavy Industries-Mahajak Air Conditioners Co., Ltd. (以下MACO社)での学校⽀援の取り組みだ。設⽴当初からの経営⽅針は「現地化」。タイ社会に根付くことを⽬指して積極的に現地の⼈材を雇⽤。⽇本での⻑期研修を⾏うなど三菱重⼯が培ってきた技術を伝えてきた。そんな中、社員から上がったのが「もっと積極的にタイが抱える社会問題解決に貢献したい」という声だった。

「タイは1985年ごろから急速な経済成⻑を遂げましたが、その反⾯、⾸都圏と地⽅の所得格差は拡⼤。教育⾯の格差も深刻で、貧しい村では学校施設や教材が⼗分に整っていません。 MACO社でも地⽅出⾝者が多く働いていて、そのような社員からの『何かできることはないか』という提案がきっかけでした」(MACO社 常務/宮家⿑さん)

学校の雰囲気が明るくなるにつれ、学校関係者と地域の⼈々との交流も盛んに。

そこで始まったのが幼稚園や⼩・中学校への⽀援。タイ北部・北東地域などの学校から「社員の故郷であること」、「施設・設備が不⾜していること」、「教員や地域の⼈々に学校をよくしていこうという前向きな意欲があること」の3条件を満たす学校を毎年1校選定し、校舎や体育館、⾷堂、トイレ、教育⽤の機材などを寄贈している。

「⼤きな特徴は、施設の建て替えや教材の購⼊費のための資⾦を寄付するのではなく、 MACO社が学校や関係者と協議し、設計や施⼯管理をサポート、現物の形で寄贈すること。こうした⽅法を取ることで予算を効率的に使えますし、何より、より近い形で地域の⼈々と関わることができます。実際、建設⼯事には⼤勢の従業員がボランティアとして参加し、⼦どもたちや保護者、地元の⼈々とともに活動しました」

学校のニーズに合わせて⽂房具やスポーツ⽤品の寄贈も⾏っている。

これまで⽀援した幼稚園・学校は21校。初期から活動に参加してきたMACO社の従業員は、その⼿応えを感じている。

「校舎が新しくなったり、トイレが新設されたりすると、⼦どもたちの勉強に対する姿勢が前向きになるんです。貧しい村では家計を⽀えるために学校を休みがちな⼦も少なくないのですが、親もできるだけ学校に通わせたいという思いが芽⽣えてきます。⼦どもたちが⽣き⽣きと学校に通っていると地域全体の雰囲気も明るくなって、⼤⼈たちのモチベーションもアップするように感じます」(MACO社/ポンチット・アランルームさん)

校舎建設の様⼦。MACO社の社員も現場を訪れ、地域の⼈と⼀緒に作業を⾏うことも珍しくない。

⽀援活動開始から約20年。寄贈した学校で学んだかつての⼦どもたちは社会⼈となった。中には教員として⺟校に戻ったり、企業で働きながら、後輩のために教育改善のための活動をする卒業⽣もいる。

MACO社が⽬指すのは真の意味での「良き企業市⺠」であること。タイの社会に根を張り、タイの⼈々とともに⽣き、成⻑する。それこそが、これからの企業のあるべき“発展”の形なのだ。

三菱重工の地球にやさしい製品づくり。

MACO社は1988年に現地企業との合弁企業としてタイに設⽴された、三菱重⼯グループのエアコン事業の中核拠点。設⽴以来、三菱重⼯グループの環境基本⽅針の精神にのっとり、環境に配慮した⽣産に取り組んでいる。例えばエアコンの製造⼯程で出る排⽔や排気の適切な処理や地球温暖化への影響が懸念される冷媒の回収・漏洩防⽌など、環境への負荷を低減するための各種環境設備を整えることで、地球にやさしい製品づくりを⽇々アップデートさせている。

タイ・バンコク郊外にあるMACO社。⼯場⾯積は約110,000m2で、⽇本をはじめ各国向けのエアコンの設計・開発・調達・製造・販売・サービスまで⼀貫して⾏う。社員の多くが現地の⼈材で雇⽤創出にも貢献している。

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