技報ダイジェスト

過去のバックナンバー(2019~)

未利用エネルギーを用いた低GWPターボヒートポンプの帯水層蓄熱システム

ターボ冷凍機

私たちの足元に眠る豊富な地下水は,砂礫などから構成される帯水層と呼ばれる地層にあり,外気温度に比べると,冬は温かく,夏は冷たく熱源としての価値が高い未利用の温度差エネルギーである。この帯水層を巨大な蓄熱層に見立てて,ターボヒートポンプを使って冷房時の温排熱,暖房時の冷排熱を貯め,温排熱を暖房に,冷排熱を冷房に,季節をまたいで有効利用する空調システムは帯水層蓄熱システムと呼ばれている。三菱重工サーマルシステムズ株式会社は,帯水層蓄熱システムに適切な高効率ターボヒートポンプを用いた冷暖房システムとエネルギー管理最適制御システムを開発した。


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冷媒の地球温暖化係数を低減したサブエンジン式輸送冷凍機TUシリーズ

輸送冷凍機

地球温暖化の抑止は世界的課題としてさまざまな分野製品において対応取組みがなされている。食品や医薬品,工業原材料の定温輸送インフラを支えるために,多くのトラックに搭載されている輸送冷凍機についても,その役割を果たしながら同時に地球温暖化への影響を低減していくことが求められる。 三菱重工サーマルシステムズ株式会社では,輸送冷凍機業界の温暖化抑制への貢献をけん引すべく,いち早く地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を採用したサブエンジン式輸送冷凍機TUシリーズを開発したので紹介する。


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ハイブリッド·電気自動車空調システム用電動コンプレッサ低振動化

カーエアコン

三菱重工サーマルシステムズ株式会社は,2007年よりハイブリッド,及び電気自動車空調システム用として電動コンプレッサを市場投入しており,独自のスクロール技術,インバータ制御方式,及び内部構造の最適化により,小型·軽量化,高効率化を達成している。このたび,車両空間の更なる静粛性確保のため,内部構造変更によるバランスを最適化し,現行機と同等体格,同等性能を維持したまま,現行電動コンプレッサ対比約25%振動低減する電動コンプレッサを開発した。


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製品の摩擦損失低減·効率向上を実現する低摩擦表面処理を用いたしゅう動面改良技術

空調用圧縮機

IBA‐FAD法(Ion Beam Assisted Filtered Arc Deposition)により成膜したta‐CNx膜を用いて摩擦試験を行った結果,冷媒雰囲気での乾燥摩擦における摩擦係数は約0.02,冷媒と冷凍機油の混合雰囲気では0.03以下を確認し,現行DLCコーティング(Diamond Like Carbon Coating)の摩擦係数 約0.1に比べて約1/3以下の低摩擦を発現させて,先行他社(自動車エンジンで使用されている)DLC対比や,コーティングなしの摩擦係数0.1-0.15と比較して,従来よりも大幅な低減を実現する技術を開発した。また,エンジンオイル雰囲気では,オイルに新たな添加剤を追加配合した条件において,摩擦係数0.04の低摩擦を確認した。摩擦試験後の摺動面の観察と反射分光分析により,摩擦面に生成したトライボフィルムを確認し,ta‐CNx膜の低摩擦機構を明らかにした。更に今回,一例として,開発したta‐CNx膜を空調用圧縮機のしゅう動部品に適用した結果,約1%の効率向上を達成した。


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数値解析を活用した気液二相流分配評価技術の開発

熱交換器

三菱重工グループが取り扱う化学プラント,ボイラ,空調製品等で使用される熱交換器では,気体と液体が混在した流れ,いわゆる気液二相流がコーン型あるいはヘッダ型の分配器によって複数の伝熱管へと配分されている。この流量分配特性を予測するためには,分配器内の気液二相流の挙動だけでなく,下流側の伝熱管内における圧力損失についても考慮する必要がある。そこで,分配器内の流れを解く数値解析と伝熱管内の圧力損失に関する一次元モデルを連成させた流量分配予測手法を開発した。試験結果との比較による検証から,伝熱管での熱交換による相変化の有無に関係なく,液相分配比を実用的な精度で予測可能であることを示した。


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R1234ze(E)を用いた大容量コンパウンド式ターボ冷凍機·ヒートポンプの開発

ターボ冷凍機

産業分野における低温プロセス用熱源機には従来プロパン(R290)やアンモニア(R717,NH3)が使用されてきたが,燃焼性や毒性を有するため安全運用にはお客様の負担が大きい面があり,環境負荷の低い代替製品が求められている。現在,モントリオール議定書"キガリ改訂"の発行等,世界各国の合意により脱HFCの動きが加速している。空調分野では大規模設備の熱源機に適用されるターボ冷凍機に低毒性,かつGWP(Global Warming Potential,地球温暖化係数)が1以下となるR1234ze(E)が採用されている。産業分野における低GWP冷媒の適用範囲を拡充するため,R1234ze(E)を使用した多段圧縮冷凍サイクルにて,‐20°C以下のブライン供給,60°Cの温水供給,及びヒーティングタワー用途に対応する技術を確立した。


関連製品

低GWP冷媒 HFO-1234ze(E) 採用、高性能


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低GWP冷媒採用の超低負荷対応インバータターボ冷凍機を用いた食品用プロセス冷却の最適化

ターボ冷凍機

地球温暖化防止を背景とした冷媒規制動向やフロン排出抑制法の施行を受けて低GWP冷媒(ノンフロン)冷凍機のニーズが高まっている。一方,冷凍機の使用用途先の一つである食品工場プロセス冷却設備では,短時間で急激に負荷が変動するバッチ運転により冷凍機が負荷に追従できない,発停過多となる問題が生じることがあった。そこで三菱重工サーマルシステムズ(株)では超低負荷対応インバータターボ冷凍機を採用した温度差利用2段冷却システム,排熱回収(温水供給)システム等の導入により,負荷変動時でも安定的な連続運転を可能にする高効率システムの納入を推進している。


関連製品

大幅な省エネ、コスト削減、CO2排出量削減を実現


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世界初CO2スクロータリー圧縮機2台搭載業務用大容量コンデンシングユニット"HCCV2001M"の開発

冷凍冷蔵ユニット

地球温暖化防止対策として, 地球温暖化係数(Global Warming Potential;GWP)の低い冷媒への転換(低GWP化)が冷凍空調機器に求められている。三菱重工サーマルシステムズ(株)は,業務用コンデンシングユニットで現在主流のフロン冷媒であるR404A(GWP3920)やR410A(GWP2090)に対し,GWPが1の自然冷媒CO2を採用した10馬力"HCCV1001"に続き大容量の20馬力"HCCV2001M"を開発した。大容量化ではスクロータリー圧縮機を2台搭載し能力対応範囲を拡大しながら,"HCCV1001"と同寸法のキャビネットに機器を収めることで設置自由度を確保した。本報では本製品の技術課題と適用技術について説明する。


関連製品

環境にやさしい自然冷媒CO2を採用


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R32冷媒に代わる低GWP冷媒を搭載したルームエアコン実証機の開発

ルームエアコン

地球温暖化対応として各種規制が進められ多様な対策が進められている中,冷熱関係では省エネだけでなく環境負荷の少ない冷媒への転換が求められている。三菱重工サーマルシステムズ(株)は,地球温暖化係数(Global Warming Potential)が極めて低い冷媒R454Cを採用し,温暖化の影響を当社従来機種より90%以上削減し,環境性を高めたルームエアコンの実証機を開発した。


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冷熱機器の省エネルギー化を実現する進化型三次元スクロール圧縮機の開発

圧縮機

三菱重工サーマルシステムズ(株)は2004年に独自の圧縮機構として,三次元スクロール(以降3Dスクロール)を提案し,3Dスクロール圧縮機を搭載した冷熱機器を2007年から生産販売してきた。3Dスクロールは,スクロールのラップ先端と端板にステップを設けることで圧縮途中の圧縮室高さを変化させ, 軸方向への圧縮を可能にしている。このため,一般的な二次元スクロールに対して小型大容量の圧縮機構を構成可能であることが特長であるが,3Dスクロール特有のステップ部の微小隙間からの漏れ損失が更なる高効率化の課題であった。今回,その課題の解決策として,3Dスクロールの特長である小型大容量を維持しつつ,漏れ損失を低減し,効率向上を達成した進化型三次元スクロール"e-3Dスクロール"圧縮機をヒートポンプモジュールチラーやVRF(Variable Refrigerant Flow)システム向けに開発した。


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"日本初"R454C冷媒を用いた空気熱源循環加温ヒートポンプの開発

ヒートポンプ

産業分野の省エネルギー化に貢献し,環境に配慮した低GWP冷媒を採用した空気熱源循環加温ヒートポンプの製品開発を行い,マイナス20°Cの低外気温でも75°Cの出湯温度と,定格COPにおいて3.3という高い効率を実現した製品を発売した。また開発した製品を実際に生産設備洗浄用温水の加熱源として導入し,その経済性·環境性効果を確認した。既設のガス炊き蒸気ヒータとのハイブリッドシステムにて導入し,ベース熱負荷を本製品が賄うことで,ランニングコスト及びCO2排出量を約50%低減できる見通しであり,環境負荷の大幅な低減が見込まれる。


関連製品

地球、自然、ヒートポンプ。空気の熱をお湯に変える。


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車載用ソフトウェア開発におけるAutomotive SPICE認証取得に向けた取組み

カーエアコン

車載機器のソフトウェア開発において,開発プロセスの共通フレームワークを定めた業界標準のプロセスモデル/アセスメントモデルとしてAutomotive SPICEが策定されている。三菱重工サーマルシステムズ(株)ではソフトウェア品質向上活動の一環として,Automotive SPICEに基づいたプロセス改善を推進しており,車載用電動コンプレッサのソフトウェア開発において開発能力レベル3の認証を取得した。本報では認証取得までに行った様々な活動,方策について述べる。


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電動車用ヒートポンプシステムの開発

カーエアコン

近年,環境規制強化に対応し世界的に急速に普及してきた電動車(xEV車)では,航続距離に直結する空調使用電力の低減が求められている。冬期の空調使用電力を低減することが可能な電動車用ヒートポンプシステムに対し,省動力化と乗員快適性を両立するため,計算機上でエアコンサイクルとそれを制御するシステムをモデル化し,シミュレーションによるシステム制御の検討を行った。更に実車両にて検証を行い,ヒートポンプシステムの構成機器を適正に制御することで高効率化と乗員快適性を両立できることを確認した。


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省エネルギー性を確保した業界トップクラスの小型軽量店舗パッケージエアコンHyper Inverterシリーズ

店舗オフィス用エアコン

近年,地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出削減が世界的に求められている中,店舗パッケージエアコンにおいても,地球温暖化係数の低い冷媒への転換や消費電力量の削減のための効率改善が必要である。一方,据付場所の制約や運搬·搬入を容易にするために室外機の小型軽量化を要望する声は非常に強く,効率改善との両立も大きな課題である。そのため,三菱重工サーマルシステムズ(株)はこの度小型軽量化と高効率化を両立させた店舗パッケージエアコンHyper Inverterシリーズを開発した。その室外機の特長及び仕様を紹介する。


関連製品

小型×軽量×高性能


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ヨーロッパデザインを採用した天井埋込型コンパクト4方向吹出し室内機 FDTCシリーズ

業務用空調機

欧州のオフィスで一般的なグリッドシステム天井では,システム天井の格子に合わせた照明,換気口等が配置され,エアコンも据付けられる。オフィス用途でよく用いられるコンパクトカセットタイプ室内ユニットも全体の天井デザインにフィットするフラットなデザインパネルが好まれる。この市場ニーズに応えるため,システム天井にフィットするコンパクトカセットタイプ室内ユニット"FDTCシリーズ"を開発したので紹介する。


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ノンストップ暖房を実現した寒冷地向壁掛型ルームエアコン "SXKシリーズ"

ルームエアコン

ヒートポンプ式空調機は,消費電力の数倍の暖房能力を得られ高効率であるとともに,火を使わないことから安全安心であり,日本国内の寒冷地域においてストーブ等の暖房機器から置き換わりつつある。しかしながら,外気温が低い場合,暖房運転時に室外熱交換器に霜が付き能力が低下するため,デフロスト(霜取り)運転を適宜行う必要があるが,通常のデフロスト運転では,コンプレッサからのホットガスを室外熱交換器へ送るために暖房運転を停止する必要があり,室内温度が低下する欠点があった。そこで,暖房運転を継続しながらデフロスト運転を可能とするホットガスバイパスデフロスト方式を採用し,さらに寒冷地域で便利な機能を搭載した日本国内の寒冷地向け壁掛け型ルームエアコンSXKシリーズを開発したので紹介する。


関連製品

厳しい寒さにも負けないパワフル暖房が可能


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空調機の監視·省エネルギーを遠隔で一括管理空調機IoT遠隔監視システムM-ACCESS

ビル用マルチエアコン

昨今,インターネットに家電製品を接続するニーズが高まっており,オフィスビルに設置する業務用エアコンにおいても同様な傾向にある。遠隔地でエアコンの運転状態を監視/制御できるシステムがあれば,外出先から戻った時に合わせてエアコンの予冷·予暖運転が可能となり,エアコンの切り忘れの対応も可能となる。また,エアコンの消費電力量は,ビルの年間消費電力量の2~4割を占めるといわれ,エアコンを最適に制御することでビルの消費電力量を低減することが可能である。M-ACCESSは,インターネット上に設置したサーバからエアコンの消費電力量を自動で制御し,ユーザの自発的な操作を必要としない省エネルギーを実現するシステムであり,グローバル展開で地球温暖化の抑制に貢献していく。


関連製品

IoTで、空調。一元管理で「見える化」「省エネ」


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トレーラ用発電駆動式ヒートポンプ輸送用冷凍機

輸送冷凍機

世界各国で推し進められている環境負荷低減への取組みは物流業界でも高まっており,輸送用冷凍機においても,省エネルギー性向上などによるCO2排出量低減や,市街地·夜間の作業·走行に配慮した低騒音化が強く求められている。三菱重工サーマルシステムズ(株)では環境負荷低減ニーズにこたえるべく,低騒音·省エネルギーを同時に実現したトレーラ用の発電駆動式ヒートポンプ輸送用冷凍機TFV150GAを開発したので紹介する。


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配送用途に適した発電機搭載小型電動輸送用冷凍機 TEシリーズ

輸送冷凍機

環境負荷低減とともに,近年のインターネット上での電子商取引(Eコマース)の発達と宅配業界の輸送量増大に伴うドライバー負荷軽減が社会的課題となっている。特に低温輸送を必要とする宅配車両においては,輸送用冷凍機の電動化によるドライバーの温度管理負荷軽減とともに操作性·視認性向上の要求が高まっている。三菱重工サーマルシステムズ(株)は,輸送車両の大半を占めるディーゼルトラックに適用可能,かつ,上記市場要求に対応可能な冷凍機専用発電機·電池を組み込んだ全電動輸送用冷凍機TEシリーズを開発したので紹介する。


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ハイブリッド電気自動車空調システム用大容量電動コンプレッサ

カーエアコン

三菱重工サーマルシステムズ(株)は,2007年よりハイブリッド電気自動車空調システム用として電動コンプレッサを市場投入しており,独自のスクロール技術,インバータ制御方式及び内部構造の最適化等により,業界トップクラスの小型·軽量化,高効率化を達成している。この度,電気自動車における急速充電時のバッテリ冷却促進やヒートポンプ適用時の暖房能力拡大等のニーズに対応するべく,大容量電動コンプレッサを新たにシリーズ展開した。開発品は,現行品対比,内部諸元の最適化により体格増加を最小限に抑えつつ,大幅な冷凍能力の拡大を達成しており,ここに紹介する。


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地球温暖化を抑制する新冷媒を採用したカーエアコン

カーエアコン

温室効果ガスの排出量は現在も増え続けており,海面上昇や世界的に発生している異常気象による災害など地球温暖化への関心は一層高まっている。エアコンには,冷媒として地球温暖化に影響を及ぼすフロンが使用されており,冷媒メーカにおいては地球温暖化係数が小さい新しい冷媒の開発が進められてきた。三菱重工サーマルシステムズ(株)の主要なお客様である三菱自動車工業(株)では,三菱自動車の国内販売車として初めて新冷媒用エアコンシステムを搭載したデリカD5を2019年2月より販売しており,当社はそのエアコンシステム(一部部品を除く)を納入している。本報では,環境負荷の小さい新冷媒と,当社エアコンが搭載されているデリカD5のエアコンシステムについて紹介する。


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非定常あるいは相変化を伴う気液二相流の数値解析による評価技術の開発

熱交換器

三菱重工グループが取り扱うプラント配管や熱交換器においては,気体と液体が混在して流れる,いわゆる気液二相流という現象を考慮する必要がある。気液二相流は相変化や気液界面抗力といった単相流にはない物理現象を伴うため,その予測·評価は単相流に比べて非常に難しい。そこで,二流体モデルに基づく二相流解析技術を開発し,これらの製品の性能評価·設計指標評価を行っており,その概要を紹介する。


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電流予測制御による大容量化対応空調機用アクティブフィルタ

インバータ

空調機などに使用されているインバータは,電源系統に電源周波数以外の高調波成分の電流が流出する。この高調波電流は電源電圧ひずみなどを引き起こし,他の機器へ障害を与えることがあり,高調波電流に関する規制やガイドラインにより規制値を満たすことが求められている。そこで,ヒートポンプチラーMSVにて,インバータの高調波電流を打ち消すように電流を出力することで高調波を低減するアクティブフィルタを開発し,このアクティブフィルタによりMSVの入力電流の歪みが31.3%から3.5%に低減できたことを確認した。


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三菱重工の冷熱技術力