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去年秋からダイナボアーズに新たに加わったメンタルトレーナーの清水利生さん。
「メンタルトレーナーとはどんなことをしているの?」と気になっている方も多いはず。
清水さんのメンタルトレーニングの秘密やその思いを聞いてみました!
・現在、清水さんのダイナボアーズでの活動は?
選手たちのメンタルのサポートをしています。
全体ミーティングでメンタルスキルを伝えることや個々のパフォーマンスアップのためのマインドセット、マンツーマンのメンタルトレーニングをするために週2回継続的に入っています。
・メンタルトレーナーを目指したきっかけは?
私は元々プロのフットサル選手として活動していて、現役時代に自身がメンタルトレーニングを受けていたことがきっかけです。
実は現役時代はプレッシャーや緊張、不安にすごく巻き込まれる選手でした。
練習をしたら技術がついてくるのは分かったのですが、試合でなかなかそのスキルが使えず失敗が続いて、試合が怖くなった経験がありました。
それからメンタルトレーニングを始めました。メンタルトレーニングを始めたのが今から14年前、プロになる前でした。
・当時は今ほどメンタルトレーニングというものの知名度はなかったですよね?
その時は全然メンタルトレーニングは今ほど知名度がなく、正直「胡散臭いな」って思っていました(笑)
所属していたチームにメンタルトレーナーが帯同していたのですが、最初は頼らずにやっていました。
しかしメンタルに課題があるというのを受け入れるしかないくらい自信を失った時期があり、その時に相談をしたことが始まりでした。
・そんな自信を失った時があったのですね。
全然自信がなかったです。周りと比べて自信を失ったり、失敗をして自信を失ったりと。
メンタルは重要だと分かっていながらも自分でなんとかできると思っていました。完全に騙し騙しやっていましたね(笑)
・プロの世界に入ってから周りの環境もありメンタルと向き合うようになったのですね。
そうですね、プロになりたいってずっと思っていて、その時に周りがどんどんプロ契約していく状態が何年か続きました。
でも実力的には劣っているとなかなか思えなかったのです。
その時に受けたメンタルトレーニングというのが今の自分の軸になっています。
・どんなメンタルトレーニングでしたか?
「教えられる」というより、自分に起こっていることを「整理整頓」する手伝いをしてくれました。
それが結果へと繋がっていて、脳の作りや仕組み、心理学の知識などトレーナーさんが様々な知識を駆使して整理整頓してくれました。
理解できるようになってから「なんで自信を失っているのか」「なぜプレッシャーでパフォーマンスが下がるのか」を理論的に理解できたのが大きかったです。
状況をこういう風に変えていければ、仕組み的には解決できるよね!というのが分かってから自身が大きく変化したことが面白く感じました。
・現役選手を引退されてからすぐメンタルトレーナーの道を目指したんですか?
はい。戦力外通告を受けた翌月には始めていました!私がトレーニングを受けていた会社に入社して、最初は本当に勉強しました。
・「教える」という立場になったときに新しい発見はありましたか?
1番の発見は自分がプレーする以外にこんなに感情が揺れる、動かされるタイミングがあるんだということです。
独立のきっかけはある野球選手がきっかけでした。その選手のサポートをして7年くらいになります。
実は三菱重工の野球部の選手なのですが、彼の行動変化や努力・活躍を見て、本当に感動したのです!それが新たな発見ですし、今の仕事の原動力となっています。
・選手とメンタルトレーナー、立場も変わりますよね。
選手も経験して、自分にはサポートする側が合っているなと思いました。しっくりきました。
現役時代も自分が目立ちたいと思っているマインドの時は上手くいきませんでした。
人を活かしたり、人のいいとこ見つけたりしながらプレーしていた時の方が活躍することができたのです。
ずっと自信がなく人の顔色や雰囲気を見ながら自分の立ち位置を空気読んできたので、その能力が初めて肯定できたのがこの仕事でした。
・プレーヤーとしてはどんな選手でしたか?
とにかく地味にハードワークして繋ぐような選手でした。
しかし、このスタンスになってから信頼を得られ、プロ契約もできました。
それまでは「スポーツ選手はこうあるべき」という考え方があったのですが、メンタルトレーナーと話してセッションするうちに、自分に合ったやり方があるのだと気づけました。
ダイナボアーズの選手をサポートする時も、選手それぞれの性格や今までの経験、今の立場やチームの方向性を全て理解した上で、脳科学や心理学を使ってパフォーマンスを引き出しています。
・この世界に入って、10年目になるのですね。
早いですね。毎日必死です。ありがたいです。
三菱重工という伝統のあるチームで責任のある仕事を任せてもらえて、感謝しています。
・ラグビーチームのメンタルトレーニングは他の競技と何が違いますか?
役割が明確に分かれてということです。
それぞれのポジションにスペシャリストがいて考えやマインドが全然違います。
型に当てはめることは意味がないと思っていて、選手自身が考えていることや考え方の癖を理解した上でどうマッチできるか、
自分のパフォーマンスを引き出すためのマインドセットができるのかということを一番大事にしています。
ミーティングで理論は多く紹介していますが、1番はマンツーマンで「どうマインドセットすれば自分の仕事を遂行できるか」
を選手と一緒に作ることを大事にしています。
・セッションの内容は口外しないこととなっているので、清水さんがマンツーマンで何を選手と喋っているのか、実は気になっています!
8割方、選手がしゃべっています。会話もしますしワークもやっています。
私はよくボールを使ってその場でゲームと似たようなシチュエーション作り、メンタリティーを整理しています。
今起こっている事の分析をして根本的な原因を見つけて、解決するためのプランまで作っています。
・まさにオーダーメイドですね。
決まった型を持っていたほうが楽なんですけど、合う合わないがあるので選手に失礼になってしまうかなと。
理想ですが、選手が人生を賭けてやっているので全員を結果でサポートしたいと考えています。
そのために知識を幅広く深く知識をずっと勉強し続けて、どんな選手でもしっかりサポートしたいと意識しています。
・ダイナボアーズに最初に来た時の印象はどうでしたか?
去年11月に合流した時感じた時に思ったのが、勉強熱心な選手が多いなと。ラグビーと向き合う姿勢が貪欲な印象でした。学ぶ姿勢が高いなと。
日本ではまだメンタルトレーニングを重んじている人の数が少ないので、機会を与えてくれるのはありがたいですし責任を感じます。
・グラックスに求められたことはありますか?
最初に言われたのは、このチームはメンタルの成長が必要だということです。
私のメンタルトレーニングでは「パフォーマンスの質を上げるために、どれだけ行動に意識を向けられるか」ということを重視しています。
その点は以前からサポートしていた岩村昂太選手に「グラックスと通ずるものがある」と言われました。
・勝ち負けが白黒分かれる世界で心掛けていることは?
選手と関わっている上で、1試合の結果だけではなく選手そのものの人生がかかっているという覚悟で臨んでいます。
毎週セレクションがあるので、苦しい思いをしている選手もいます。スキルだけではなく、セッションによって選手自身がなりたい自分になれレバベストだと思っています。
私自身が勝ち負けに揺さぶられすぎないようにサポートしています。
一番は客観的に見ることを心がけています。
・選手の変化は?
自信を感じます。シーズン前はリーグ内での立ち位置がわからなかったですが、自分たちがやってきたことを土俵に乗せて戦うことによって勝てる試合もありました。
自分たちの仕事をすれば結果がついてくるんだという、自信を感じます。
個人差はありますが、感覚をちゃんと言語化できるようになってきた選手は成長を感じます。
例えると思考のクローゼットができて、その中の服がどの順番に整理されているか明確に理論的に分析できている力は伸びてきています。その力というのは修正力と再現力につながります。
・岩村キャプテンの会見での発言でも成長を感じます。
トヨタ時代からコーチングしていますが、試合中に客観できる力が素晴らしいと思います。
自分のプレーの中身が言語化されていると顕著に感じます。
キャプテンという責任の中でも細かく整理できているなと感じます。他の選手も然りです。
・清水さんご自身も思考の整理はしますか?
めちゃくちゃしています!自分が自分ことの整理をできなくなったらこの仕事辞めようと思っているくらいです(笑)
仕事を始めたばかりの時は過去のことや考え方の癖など整理できないことが沢山あり、辛い思いもしました。しかし自分で経験をしているからこそ、人にも質問をぶつけられます。
・清水さんが練習中につけているノートに何が書いてありますか?
プレーが上手くいかなかった後の反応を書いています。
落ち込んでいるように見えていたら自分にもう少し期待していたのかなとか、イライラしていたらもっといい状況を期待していたのかな・・・
などその辺りを見ています。待っていてもいい選手、こちらから声をかけた方がいい選手がいます。
限られた時間の中で深くチームのことを知れるように、チームが大事にしているフレーズなどもメモしています。
現役時代の観察力と繋がっているかもしれません。
・なかなか腹を割って話すことは難しいですよね。
私が評価をする人ではないということが大事です。
自己開示も大事にしています。
プライベートのこともなんでも言います。
距離を感じる時は、自分の話をして安心感を持ってもらうようにしています。
・清水さんの今後の目標はありますか?
メンタルトレーニングで可能性を広げて目標達成できる人を増やしたいという夢があります。過去の経験から、限界の一歩先をメンタルトレーニングによって超えられると信じています。諦めそうな時や自分を否定しそうになった時に、それをもぶち壊せるようなサポートをしたいと願っています。ダイナボアーズは大きな目標やビジョンがあるので、ダイナボアーズのフィロソフィーを大切にしなが人もスキルも成長したらもっと魅力的なチームになると信じています。それが私の目標です。
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「相手が人生を賭けているのだから、自分もそれくらいの覚悟で行く」
普段は笑顔で柔らかい雰囲気が印象的な清水さんですが、話を伺うと内に秘めたマグマのように湧き上がる情熱を感じました。
一過性のものではなく、その後の人生にもつながる清水さんのメンタルサポートのお話は大変興味深く、あっという間に時間が過ぎていました!
勝負の世界にいるからこそ、コントロールできる事柄は自分で整理整頓する大切さを再確認した取材でした。